ひろげよう人権|東京人権啓発企業連絡会

ご存知ですか

人権に関するさまざまな知識のコーナーです

障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」を訪ねて

横浜ラポール外観

▲横浜ラポール外観

東京人権啓発企業連絡会 広報委員会
2019年12月18日、広報委員会は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を翌年に控え、障害者の為のスポーツ施設のフィールドワークを実施しました。

笹川スポーツ財団の障害者専用・優先スポーツ施設に関する調査によると、全国で141の障害者専用・優先スポーツ施設が運営されています。
今回は、JR新横浜駅から徒歩で約10分のところにある障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下「横浜ラポール」)を訪ねました。

基本理念と目的

「横浜ラポール」の「ラポール」とはフランス語で「心の通じ合い」という意味を持っています。障害者の「完全参加と平等」の実現という国際障害者年の理想に基づき、「国連障害者の10年」の最終年の記念施設として1992年8月に開館しました。
「横浜ラポール」では、リハビリテーションのゴールとなるQOLの向上やノーマライゼーション社会の実現を目指し、より多くの障害者がスポーツを楽しむ環境を構築することを運営の基本理念としています。
また、障害者がスポーツ、レクリエーション、文化活動を通じて、健康づくりや社会参加の促進をはかるとともに、障害者が主体的に参加する中から市民交流を活発に行い、この活動を広く発展させていくことを目的として運営されています。

文化イベント・和太鼓演奏

▲文化イベント・和太鼓演奏

施設の概要

フィットネスルーム

▲フィットネスルーム

「横浜ラポール」は、地上3階地下1階建てで、築30年近く過ぎているとは思えないほど綺麗に整備された施設でした。2018年度の利用者数は、40万人を超え、その約70%が障害者の利用者で、全国有数の利用者数を誇っています。
最初に施設の説明ビデオを見てから、見学のスタートです。まず、担当者から説明があったのが、施設内に巡らされている点字ブロックについてです。当然、目の不自由な方も利用されるので、点字ブロックが設置されているのですが、他の障害の利用者も想定して、点字ブロックの山を低く設定しているとのことでした。
まず、1階にあるフィットネスルームから見学しました。エアロバイクやトレッドミルなど各種トレーニングマシーンが設置され、一見すると街中のフィットネスクラブと変わりません。でもよく見ると車いす常用者でも使用できる手漕ぎエアロバイクやスタンディングマシーンなど色々な障害のある方に対応した設備を備えており、色々な障害のある方々が黙々とトレーニングに打ち込んでいました。
ボウリングルーム

▲ボウリングルーム

また、1階にあるメインアリーナでは、卓球やテニスを障害者と健常者が共に楽しんでいる姿を見ることが出来ました。
2階に移動して、ボウリングルームを見学しました。
4レーンの本格的な施設です。視覚に障害のある方のために音声誘導装置や点字得点表示装置などを備えた優れものです。それ以外にもレーンをフラット化、取り外し可能な手すり、バンパーや投球補助器具(スロープ)など、様々な障害に応じた工夫により、みんなが一緒に楽しめる作りになっています。
2階のプールギャラリーから1階のプールを見学することが出来ました。とても明るく開放的な25m×6コースの温水プールです。プール槽が床面から45㎝(車いす座面と同じ高さ)高く設計されており、下肢障害や車いす使用の方の入退水がしやすいようになっています。また、重度障害の方には、プール用車いすで入退水できるリフトも設置されています。

プール施設

▲プール施設



創作工房

▲創作工房

文化施設が充実しているのも、「横浜ラポール」の特徴です。2階にある創作工房は、料理、陶芸、手芸、絵画などの創作活動の拠点になっています。調理実習や食事会にも利用され、車いすの方が使いやすい設計の台所や障害者が使いやすい食器も完備されています。
そして、3階に移動しました。3階にはとてもユニークな二つの施設がありました。「おもちゃ図書館」は障害児とその家族の生活領域と遊びの楽しみを広げるために、おもちゃの貸出しや行事、講座などを実施しています。また、「聴覚障害者情報提供施設」では聴覚障害者などを対象とした手話・要約筆記通訳者の派遣・研修、聴覚障害者相談業務、字幕・手話入りビデオなどの制作・貸出しなどを行っています。

おもちゃ図書館

▲おもちゃ図書館

聴覚障害者情報提供施設

▲聴覚障害者情報提供施設


今回は見学が出来ませんでしたが、地下には1周160mのトラックがありフィールド内にはアーチェリー場やローンボウルス場、バウンドテニスコートがあります。また、視覚障害者ランニング誘導マシーン(ガイドランナー)も設置されており、雨を気にせず色々なトレーニングが可能です。

東京2020大会のレガシー

東京オリンピック・パラリンピックの開催が目前に迫ってきました。開催決定から今日まで障害者を取り巻く環境は、多方面で大きく変化してきました。
内閣府「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(2018年)では、2020年の東京パラリンピックは共生社会の実現に向けて人々の心の在り方を考える絶好の機会であり、この機を逃さず、国民全体を巻き込んだ取り組みを展開すべきとしています。今まさに、共生社会の実現に向けて、国をあげて大きく前進している状況と言えるでしょう。
2020年の東京大会のレガシーの目的は、障害者スポーツのイベント開催、交流、理解啓発で終わりではなく、2020年をきっかけに社会の制度や仕組みを変革して、パラダイムシフトを起こし、人々の認識、社会的構造を変えていくことです。
障害の有無にかかわらず、すべての人が共に生きる社会に向けて大きく前進し、障害者が当たり前にスポーツ施設に行き、当たり前に仲間とスポーツを楽しむ。そんな光景を日本のスポーツ施設で日常的に見ることが、本当の意味での共生社会と言えると思います。
「横浜ラポール」が障害者を中心として市民相互の交流の輪を広げ、また、ノーマライゼーションの推進の拠点になれば、本当に喜ばしいことだと思います。今回のフィールドワークを通してそのことを強く感じました。

障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール地図

2020.10掲載

一覧へ戻る