ひろげよう人権|東京人権啓発企業連絡会

書籍紹介

お薦めする人権関係図書です。書籍紹介の「内容の概略」は出版社の紹介文を引用しています。

犯罪の証明なき有罪判決
~23件の暗黒裁判~

著者 吉弘 光男(編集)
   宗岡 嗣郎(編集)
出版 九州大学出版会
定価 3,200円
発行 2022年2月15日

冤罪はなぜ起こるのか。

刑事訴訟法は明文で、「犯罪の証明があった」ときにのみ、有罪判決において「刑の言渡し」ができ(刑訴法333条)、「犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡しをしなければならない」(刑訴法336条)と規定する。しかし日本の刑事裁判実務では、裁判官の「自由心証主義」が過度に重視され、現行法上の有罪判決の前提である「犯罪の証明」が軽視されてきた。その結果、「裁判官の自由な判断」により誤った有罪判決を生み出す「暗黒裁判」が後を絶たない。

本書では、70数年に及ぶ現行憲法・刑事訴訟法の下で、絶えることなく続発する誤判事件の実態について、最初期から現代にいたる膨大な誤判例の中から23件の裁判を分析することで、誤判の決定的な原因を探った。そこには、別件逮捕を用いた自白獲得や共謀共同正犯の承認、情況証拠のみに基づく事実認定、捜査段階の調書への全面依拠、客観性を欠く供述証拠の「真偽」の判断等、憲法が保障する被疑者・被告人の人権を無視した実務の実態があった。本書はとくに論理的可能性と実在的可能性の違いに着目し、主観的・情緒的な「心証形成」を制約する、客観的・理性的な「証明」の論理を示すことによって、裁判官が誤判を犯す原因を明らかにし、冤罪を防止するための方策を提言する。

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