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クローズアップ

男女脳差理解による ダイバーシティコミュニケーション

竹之内 幸子

●プロフィール

竹之内 幸子
(たけのうち ゆきこ)

大学卒業後、石油元売り会社に入社、マーケティング・販売促進・営業・CS向上などに従事
結婚後、出産→育児の最中は、中小企業で経理・財務分野でアカウンティング業務を経験し、その後、営業支援会社で中小企業の営業支援コンサルタントとして全国300社のクライアントの課題解決に携わる
2007年、研修会社で人財育成コンサルタントを務め、2012年8月独立、株式会社Woomaxを設立
官公庁・企業で「女性リーダー研修」「管理職向けダイバーシティコミュニケーション研修」「育休前研修」など多くの講座を受け持つ
2015年6月 株式会社アイネット(東証第一部)社外取締役就任

組織に多様性を活かす必要性について

図1 労働力人口は2030年にかけて1割近く減少 日本の人口は2010年をピークに減少傾向にあり、2020年代半ばには1.2億人を割り込むという。また、65歳以上人口の割合が3割を超えるといった「少子高齢化」の中、政府の働きによって労働力率()が緩やかな上昇をつづけたとしても、2014年6587万人いた労働力人口は2030年には5954万人と1割近く減少するというデータ(図1)がある。

 これまでは、企業の労働力を主に「日本人」「男性」「総合職」という同じような属性で構成することができた。同じ属性同士であるゆえ に、社内のコミュニケーションは取りやすく、あうんの呼吸で物事は進んだ。ひとつの目的に向かって組織をまとめ、まい進するためには効率も生産性も良いと言える。
 しかし、労働力人口減少の問題だけでなく、市場の変化やIT革命により、既に組織の構成は、外国人、女性、シニア、障がい者、契約社員など、多様性を内包しているのが現状だ。これは必然的に、あうんで通じることが少なくなるということだ。異質な価値観を持つ個々がコミュニケーションするとき「当たり前」は存在せず、ひとつひとつ衝突や緊張があるであろう。ただ、この衝突や緊張を繰り返しながら、影響しあい、新しい考え方、新たな価値観を生み出している。
 いつまでも「昔は良かった」と言っているのではなく「違いがあるのは当たり前」「衝突があるのは当たり前」「あうんの呼吸は通用しない」と考える人材が必要になっている。組織が進化し成長し続けるためには、違いを知り、理解し、ダイバーシティコミュニケーションを実践することが必要なのである。
 では、違いを理解し、ダイバーシティコミュニケーションを意識すると、どのような効果があるだろうか。例えば大手電機メーカーの「-7℃のチルド室」。かつての冷凍冷蔵庫は、すでに成熟商品で「いかに早く凍らせ、いかに長く鮮度を保つか」を揺るがぬ価値として開発を競っていたが、コチコチに凍った食品を解凍するのは手間がかかるし、ムラも出る。仕事も家事も両方担当しなくてはならない人には、「長持ちする」というメリットよりも、「すぐに調理ができる」というメリットの方が魅力的だろう。
 このアイデアは当初、上層部に理解されず、反対もされたが、女性開発者は諦めることなく、社内の仲間を増やし、実際の市場(ユーザ)の声を集めて、決裁を取った。結果はご存知のとおり大ヒット。ここでポイントなのは、「忙しい消費者のための〈時間を提供する家電〉」という新しい価値を示したということだ。もし、従来通りの価値観に疑いを持たない同じ属性の開発者だけだったら、「-7℃のチルド室」は生まれなかったかもしれない。
 これは、BtoC商売だけに限らない。どのような業種業態にも当てはまることだ。組織内が同じ属性ばかりでは、意見も画一的になりがちだが、異なる視点が加わることで新しい価値が生まれる。こうした声をキチンと聞ける態勢にあるかどうか、社内を見渡してほしい。
 「違いなんてない」ではなく、「違いを知るのが面白い」と言える文化をつくることが大切である。「違いに気付く」→「違いを認める」→「価値創造」というステップを経て、多様性が組織に活かされる。

(注) 労働力率:15歳以上人口に占める労働力人口の割合のことをいう。

2016.8掲載

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