私たちは企業の立場から人権の輪をひろげるため、人権に関するさまざまな情報を発信しています。

くらし

人権と絵手紙

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から、半年が経とうとしていますが、家族や住む家、仕事を失うなどの苦難がいつ回復されるのか、依然見通しが厳しい状況と伺っています。
 復興には被災者の方々のメンタルケアも重要な要素といわれています。2011年5月2日付読売新聞夕刊によると、そうした被災地の仲間を勇気づけようと、絵手紙を文通している方がいるそうです。絵手紙作家小池邦夫さんがその人です。小池さんは日本絵手紙協会の会長を務めており、被災地にいる仲間へ激励の絵手紙を震災直後から送っていました。小池さんは混乱を慮って、「返事はいりません」と書いていましたが、感謝の気持ちと思いをつづった絵手紙の返事が次々と届き、8月上旬現在で約300通に達したそうです。小池さんは「強く生きようとする人たちの思いが伝わり、希望を感じた」と語っています。
 絵手紙には希望や思いが伝わる力があるのでしょうか。日本絵手紙協会が発行している月刊絵手紙の2月号に、受刑者へ絵手紙を指導した今井洋子さん(日本絵手紙協会公認講師)の話が掲載されていました。今井さんは12年前に岡山刑務所から「受刑者に絵手紙で心の教育をしてもらえませんか」という依頼を受けました。
 「男性受刑者、それも大半が生命犯と聞いて、絵手紙で果たして何ができるのだろうか」と、今井さんは不安と悩みで返事ができなかったといいます。しかし、「彼らは法の裁きを受けて更生に励んでいます。彼らの楽しみは家族に手紙を書くことであり、その手紙を絵手紙で出せて、さらに社会復帰してからも絵手紙がかけるともっと素晴らしいでしょう」という刑務官の話に受刑者の更生を願う深い愛情を感じ、依頼を受けることにしました。それから10年以上が経ち、今井さんのもとへ元受刑者から、感謝の言葉とともに「今後も絵手紙を勉強し、かつての自分のように自分を見失ってしまった人などに生き甲斐として、今井先生のように感動を伝えたい」という手紙が届いたそうです。
 今、法務省では刑を終えて出所した人に対する偏見や差別などの人権侵害を、人権課題の一つとして取り上げています(※)。出所した人の社会復帰には、周りの人々の理解と協力が必要とされていますが、同時に本人の強い更正意欲が必要とされています。今井さんは、元受刑者の手紙を読み終えて、『人は変われる』ことを信じさせてくれた絵手紙の力とともに、人を思いやる心さえも育っていた、これこそが更生の第一歩ではないかと思われたそうです。
 月刊絵手紙の山崎園子編集長は、「絵手紙は今の自分を素直に見つめて一生懸命かくことが何よりも大切で、出来上がったものには優劣はありません。読み手の気持ちを思ってかくことで心の交流ができ、幸せ配りができるのです。また、感動する力が育ち、観察力や集中力も鍛えられ、自らを表現することができるようになるということで、実際に学校教育や企業の研修にも取り入れられたりしています」と語っています。
 今回は絵手紙についてご紹介しましたが、皆さんも人権問題への対応について、どのような方法があるか考えてみるのもいかがでしょうか?


日本絵手紙協会HP http://www.etegami.or.jp/


(※)主な人権課題   刑を終えて出所した人
 刑を終えて出所した人などに対する就職差別等が発生しています。
 刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差別は根強く,就職に際しての差別や住居の確保の困難など、社会復帰を目指す人たちにとって,現実は極めて厳しい状況にあります。刑を終えて出所した人などが,地域社会の一員として円滑な社会生活を営むためには、本人の強い更生意欲と併せて、家族・職場・地域社会の理解と協力が必要です。これらの人々に対する偏見や差別をなくすため、毎年7月に「社会を明るくする運動」が実施されるなど、様々な取組が行われています。
出典:法務省HP http://www.moj.go.jp/JINKEN/kadai.html

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