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知識

在日コリアンの人権について(4)

(10)在日コリアンは国民健康保険や年金に、いつ頃まで入れなかったのですか?

【国民健康保険】 在日コリアンが国民健康保険(以下、国保)に入れるようになったのは1960年代後半からです。1965年に締結された日韓条約の日韓法的地位協定による協定永住資格(韓国籍のみ)の保有者に対して国保への加入が認められました。「朝鮮」籍の場合は、1970年代に入って条例を定めた市町村において加入できるようになりました。在日コリアンはそれまで、保険証がないため医療費を全額払わねばならなかったのです。現在は、日本に1年以上滞在するすべての外国人が加入できます。

【国民年金】 在日コリアンはその多くが自営業を営んでいるため、年金制度のなかの国民年金が加入可能な制度だったといえます。ところが、在日コリアンは国籍条項が廃止された1982年まで国民年金に加入できませんでした。しかし、1982年当時、36歳以上の人たちは60歳までに年金受給に必要な25年間の掛け金期間を満たせないという理由で老齢年金から排除されました。また、1982年の時点で20歳以上の「障害」を持っている在日コリアンも障害福祉年金から排除されたのです。
 現在、推定約6万人の在日コリアン高齢者が無年金者であり、約3千名が障害基礎年金から排除されたままです。在日コリアンに対しても日本人の場合と同様に、何らかの経過(救済)措置が取られるべきではないかと思います。このような実態に対して、「市民平等の立場」から、2003年6月現在、全国で740の市町村が「高齢福祉金」を、606の市町村が「障害福祉金」を支給しています。

(11)民族教育上の差別とはどのようなことですか?

 日本には現在、韓国・朝鮮系の小・中・高校が100以上もあり、大学は朝鮮大学校が一校あります。現在、在日コリアンの3世から5世の人たちが通っています。これらは、民族学校と呼ばれるもので、1995年の人種差別撤廃条約においても、少数民族(マイノリティー)が自民族の言語、文化をはぐくむ民族教育を行うことは権利として保障しています。
 それにもかかわらず、日本政府は在日コリアンの民族教育に対して一貫して積極的に支援しないという立場を取ってきました。その内容を項目別に分けると、以下のとおりです。

民族学校卒業生に対して、高校卒業資格、国立大学入学資格を認定しない。
公的助成は国はゼロ、地方の助成も日本の私学との格差が大きい。
特定公益法人の指定寄付金の取り扱いを認めない。(学校への寄付金に税金がかかるということ)

 上記のような取り扱いの根拠として、民族学校が学校教育法に定める1条校ではないことが理由とされています。1条校になるためには、文部科学省が決めたカリキュラムや教科書の採用、教員資格を持った教員の配置などが要求され、授業は当然、日本語でということになります。このような内容での教育は民族教育ではありえないというのが民族学校関係者の考えで、多くの韓国・朝鮮系の民族学校は、現状の教育内容を尊重したうえで、1条校に準じた取り扱いを要望しているのです。

(12)在日コリアンは公務員になれないのですか、それはなぜですか?

在日コリアンは、限られた範囲においてのみ公務員になれます。国家公務員に関しては、国立大学教員にわずかに在日コリアンがいます。また、国立病院の医師や看護師として活躍している在日コリアンは非常に限られています。
 地方公務員に関しても、以前は「日本国籍を有する者」に限るという1953年の内閣法制局の見解を踏まえ、在日コリアンはその採用から排除されていました。1970年代からの在日コリアンと日本市民による差別撤廃運動により、事態は改善の方向に向かいつつあります。
 その後、1973年には近畿圏において地方公務員採用の国籍条項があいついで撤廃され、1984年には郵便外務職への採用に道が開かれました。しかし、全面的に国籍条項が撤廃されているわけではなく、現在もなお、特定職に限ったり管理職にはなれないという任用上の問題なども残っています。
 国籍を理由に在日コリアンが公務員採用において差別されるということは、生存権にかかわる重大な問題であり、早急に是正されるべきでしょう。

(13)企業での民族差別にはどのようなことがあるのですか?

 公務員採用において国籍条項の壁が存在していることを前項で説明しました。これにならうかのように民間企業においても、これまで国籍を理由に在日コリアンを採用しない企業が多かったといえるでしょう。
 1970年、大手電機メーカーA社において、国籍を理由にある在日コリアン青年の採用が取り消されるという就職差別事件がおこりました。この青年は裁判を通じてその不当性を訴え、最終的には勝訴しました。
 これ以降、民間企業において表だって国籍を理由に在日コリアンを採用から排除するということはできなくなりました。しかし、改善の兆しはあるものの、現実には採用を控える会社が未だに存在しているといえるでしょう。
 採用における差別的排除のほかに、在日コリアンが採用後、日本国籍の取得(いわゆる帰化)を強要されたり、日本名(通称名)の使用を強要されるという差別も報告されています。
 日本社会の国際化とともに企業の国際化も要求されています。日本に定住している在日コリアンという異なる民族の出身者に対して平等な就業の機会をあたえることは、企業自身の国際化、企業倫理や社会的責任という観点からも大事なことと思います。

(14)在日コリアンはアパートなどへの入居で、いまだに差別があると聞きましたが?

 1989年、手付け金まで支払った後、家主から外国籍を理由に入居を拒否された大阪在住の裵健一(ペーコニル)さんが「入居差別裁判」を起こしました。1993年、裵健一さんは「入居差別は不当」という勝利判決を得ましたが、その後もこのような入居差別がなくなったとはいえない実情があります。
 最近は、入居差別事件はなかなか表面に出てきません。理由は、不動産会社が「外国人には部屋は貸さない」という家主の物件は、当初から賃貸を希望する外国人に紹介しないケースが多いためです。このため、在日コリアンの3・4世の場合でも、何件もの不動産会社をたずねなければならないという実態があります。また、契約までこぎつけても、「保証人は日本人でないとだめ」というケースも報告されています。
 国籍を理由とした入居差別は人権侵害です。啓発を通じ、このような入居差別を撤廃してゆかねばなりません。


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