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見聞

資料館探訪〜国立歴史民俗博物館(最終回) 日本の歴史と民俗を学ぶことは、わが国の人権を知るうえでも欠かせません。この博物館の多角的で充実した展示は、理解を深めるだけでなく、興味も広げてくれることでしょう。

◆ 展示室の紹介

第4展示室「民俗」

 列島の民俗文化を、(1)民俗へのまなざし(2)おそれと祈り (3)くらしと技の3ゾーンで学べます。ビジュアルも駆使した立体的で迫力のある展示です。自然の脅威と生死観、精霊や妖怪、祈りと祭りなど、想像力豊かな民俗を考えます。副室での特集展示もあります。この展示室は2013年にリニューアルされました。

▲宇出津あばれ祭り(石川県) ▲お人形様(福島県)


第5展示室「近代」

▲浅草映画街(大正〜昭和時代) 19世紀後半の近代出発から1920年代までを学べます。文明開化や殖産興業と富国強兵、北海道開拓とアイヌの近代にも目を向けています。また、部落差別と水平社、関東大震災の恐怖についても焦点を合わせています。女性の視点からの消費生活文化では、同潤会アパートの復元や化粧品ポスターなど、都市と大衆の生活感あふれる展示になっています。なお、ミニシアターでは、無声映画の上映もあります。


第6展示室「現代」

 1930年代の満州事変からオイルショックをへた1970年代まで、戦争と平和、そして戦後の生活革命について学べます。人々の生活と文化、それを取り巻く日本社会と世界の動きについて、生活用品や出版物、映画・ニュースなどの映像資料など、多彩な展示になっています。「婦人参政権啓蒙ポスター」が、どこか誇らしげです。

◆ 人権の視点から

 長い歴史と民俗の変遷のなかに、人権を考えるうえで重要な展示が随所にあります。

 例えば、生死観と祈りなどの精神世界、中世の職業分化、さらに人口の5%にすぎぬ武士が支配する近世身分社会には、現代に通ずる差別問題の構造が見えます。他にも、国際社会との外交・通商関係から、キリスト教伝来や琉球交易、北海道開拓と先住民族アイヌの同化政策などがあげられます。

 展示内容は、原始・古代から現代に至るまでの歴史と日本人の民俗世界をテーマに、だれもが容易に理解を深められるように工夫されています。実物資料だけでなく、精密な複製品や学術的に裏付けられた復元模型なども素晴らしく、一見の価値があります。

 人権問題については、第5展示室をご紹介しましょう。文明開化は、西欧文明の摂取による社会の抜本的な近代化をめざす改革でした。四民平等と国民皆学の近代学校制度が誕生し、自由平等の意識から自由民権運動も起こりました。しかし、急激な西欧化は多くの歪みや格差を生み、伝統文化を破壊し、また差別の歴史をあぶり出すことにもなりました。

 部落差別問題では、水平社宣言や荊冠旗、差別戒名の位牌と墓石など、差別をなくす歴史の流れが展示されています。安永7年(1778年)の風俗取締廻状からは、現在の部落差別につながる身分の固定が定着していたと見てとれます。

 関東大震災での朝鮮人虐殺については、小学校4年生の描いた達者な絵が印象的です。眼に焼きついたであろう光景とは、警官や自警団が無抵抗の朝鮮人の命を奪うところでした。復興支援してくれたアメリカに贈るはずのその絵は、幼い子どもだけに、見たままに再現したのでしょう。すべてが痛ましい限りです。

 人権問題と限れば、直接的な展示物は必ずしも多くありません。しかし、その一つひとつは、民俗の大河からあふれ出すように訴えかけてきます。「歴博」の学術的な研究成果もさることながら、秀逸な企画・展示力が光ります。

◆ おわりに

 「歴博」では、ほかに企画展示と特集展示があります。2014年3月までの開催予定では、「さまざまな節供」(特集展示/11月26日〜5月6日)、「歴史にみる震災」(企画展示/3月11日〜5月6日)などがあります。

 なお、館内施設には、図書室、ミュージアムショップ、レストランなどのほか、ガイドレシーバー、おむつ換え台、障がい者優先エレベーターや、車椅子・ベビーカーの貸し出しなどの用意があります。


2014.1掲載

資料館探訪〜国立歴史民俗博物館
(最終回)

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