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見聞

資料館探訪〜日本民藝館

 今回は、「民藝運動の父」といわれた柳宗悦が設立した『日本民藝館』を訪ねました。

◆ 設立の経緯

▲西館  「民藝」という言葉は、1925(大正14)年に柳宗悦と河井寛次郎、濱田庄司が旅の途中で考え出したものであり、民衆的工芸を縮めた言葉です。彼らは、「民藝」を次のように捉えました。
 「民藝は、日常のように供せられる実用品であり、普通品である。しかし、自然が与うる素材には地域性があり異なる種類、味わい、美しさがある。名もなき民衆が美を作ろうという意識すら持たずに作り上げた美の世界にこそ、真の美がある」
 そして、民藝品のための美術館を設立することで合意し、各地を旅し蒐集活動を行っていきます。しかし、多くの課題があり美術館の実現は簡単にはいきませんでした。そのような中で新築中の帝国博物館に、蒐集品の一切を無償で寄付する考えを立て申し入れを行いますが、この提案は価値のないものとして受け入れられませんでした。しかしこのことがあって、国に頼らない美術館建設への決意を固め、品物蒐集情熱を一層燃やしていくこととなりました。
 その後、志を立ててから10年の歳月が過ぎたとき、山本為三郎氏などの口添えもあって倉敷の実業家大原孫三郎氏から、巨額の寄付・支援を受け、ついに1936(昭和11)年に開館の運びとなりました。
 こうして民藝の思想と美の基準を主張するための展示館が誕生しました。
 初代館長は、柳宗悦。没後、2代目館長に濱田庄司、3代目に柳の長男でインダストリアルデザイナーの柳宗理、4代目に実業家の小林陽太郎が就任し、現在に至っています。

◆ 展示館のご案内

 「民衆的工芸品」をテーマに柳宗悦が蒐集した国内外の陶磁器や織物、染物、木工、漆工、絵画、金工、石工、竹工、紙工、硝子など約1万7000点を収蔵、展覧しています。年4〜5回の特別展のほか、国内外で関連の展覧会を開催しています。
▲本館 <本館>
 1階には、染織品陳列室、古陶磁陳列室、外邦工芸陳列室などがあります。階段を上がると、右手に李朝工芸陳列室、同人作家陳列室、左手に絵画陳列室、木漆陳列室、また特別展などに使用される大展示室があります。
<西館>(旧柳宗悦邸)
 道路を隔てて本館に向かい合って建っています。母屋は日本の伝統的な入母屋造り瓦葺木造二階建て。一方で、書斎の出窓、家の中央を東西に貫く廊下を上下階に、また階段を2ヵ所に設けて西洋の合理性を取り入れながら日本の伝統を守っています。また宇都宮近郊から移築した豪快な石屋根の長屋門は、応接室や音楽室などとして利用した建物です。

◆ 民藝館のコンセプト

 民藝館の使命は美の標準の提示にあります。
 民藝館では一貫した美の目標の下に、個々の品物をまた全体を整理しています。単なる陳列場ではなく、従って並べ方も事情の許す限り物の美しさを活かすように意を注いでいます。品物は置き方や、並べる棚や、背景の色合いや、光線の撮り方によって少なからぬ影響を受けます。陳列はそれ自身、一つの技芸であり創作であって、出来得るなら民藝館全体が一つの作物となるように育てたいと考えています。

◆ 柳宗悦が見つけた美の世界

◎木喰仏(もくじきぶつ)
 柳宗悦のなした数多の仕事の中で、木喰仏の発見とその後の調査研究は、最も集中的に情熱が注がれたものでした。柳を木喰へ導いたのは李朝陶磁でした。朝鮮の工芸品蒐集のパートナーであった浅川巧の友人小宮山清三の李朝陶磁コレクションを見学に訪れた際に素朴な仏像を偶然眼にし、即座に心を奪われてしまう。江戸中期、甲斐の山村に生まれた木喰上人は全く無名の存在でしたが、既存の価値観にとらわれない自由な眼を持った柳により、真価が世の中に理解されることとなりました。

◎大津絵
 大津絵とは、江戸時代に大津の追分周辺で盛んに売られた絵のことで、要は土産絵です。同じものが、安く大量に描かれています。もともとは仏画からはじまり時代の推移とともにさまざまな図柄が生まれました。また、生きる上での道訓的な戒めや世相への風刺をこめて表されています。
 柳は、美術品というより工藝品ともいえる大津絵に魅せられ、その美的価値を世に問うこととしました。1929(昭和4)年の時です。

◆ あとがき

 日本民藝館は、2011(平成23)年は開館75周年にあたり、私立の美術館としては財閥系を除き、最も歴史のある施設だそうです。現在、非常勤を含め15名の人員で運営しており、今回は杉山学芸部長からお話と館内をご案内していただきました。
 柳宗悦の民藝にかけた思いをお聞きしているうちにお話に引き込まれ、あっという間に予定の時間が過ぎてしまいました。
 また、今回は特別に西館の中をご案内いただきました。すばらしい調度品や書斎の蔵書なども堪能することができました。また屋根瓦は、1枚約30キログラムの大谷石が700枚敷かれてあり、重さを支えるための部材や工法の工夫などが施されているなどのお話をお聞きし、建物自体が最大級の民藝ではないかと深く心に残りました。皆様も、一度是非「日本民藝館」を訪れて見ては如何でしょうか。

■参考文献 「民藝四十年」柳宗悦著 岩波文庫「別冊太陽柳宗悦の世界」平凡社

地図

問合せ先 〒153-0041 東京都目黒区駒場4丁目3番33号
Tel 03-3467-4527
開館時間 午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日 (祝日または振替休日の場合はその翌日)・展示替期間は休館
入場料 一般1,000円 大高生500円 中小生200円
交通機関 京王井の頭線「駒場東大前」駅西口から徒歩7分

http://www.mingeikan.or.jp/

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