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見聞

「全国水平社」結成に導いた三青年〜部落差別からの解放〜(その1)

「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれた「全国水平社宣言」は、日本ではじめての人権宣言といわれます。全国水平社は、奈良県御所市柏原の被差別部落で兄弟のように育ち、後に「柏原三青年」と呼ばれる阪本清一郎、西光万吉、駒井喜作らによって結成に導かれました。“人間は尊敬されるべきもの”との自覚のもとに、彼らが掲げた「部落民としての誇り」と「人間としての尊厳」とに貫かれた水平社精神は被差別部落の人々の心を強く掴み、部落差別からの解放を願う運動として全国に広がっていきました。

創立メンバー
▲創立メンバー。左から平野小剣、米田富、南梅吉、駒井喜作、阪本清一郎、西光万吉、桜田規矩三

◆ 兄弟のように育った三青年

 奈良盆地南端の清く川が流れるのどかな村が全国水平社創立メンバーのふるさとです。村にあるお寺(西光寺)の長男が西光万吉。その2軒隣りで寺の檀家総代の息子が阪本清一郎。駒井喜作の家は寺の山門の前という、ごく狭い地域で3人は生まれ、兄弟のように育ちました。
 「ガキ大将」の阪本が「寺の兄ボン」と皆に呼ばれ、温厚で病弱だった3歳年下の西光を庇い、西光よりさらに2歳年下の駒井は3人の末っ子的な存在でした。
 明治になったときに政府は、「解放令」(1871年)によって「えた・非人」身分をなくしました。しかし、差別を無くすための具体的な施策が何もおこなわれなかったために、その後も被差別部落の人々は「新平民」などと蔑まれ、公然と理不尽な差別がおこなわれました。そんな社会背景の中、彼ら3人も大人として独立していく過程の中で、差別の現実に向き合わざるを得なくなってゆきます。
 西光は中学の級友や教師からの差別による2度の学業放棄のすえ、画家を志して上京し、その才能を開花させます。しかし、画家としての将来が有望視されるほどに自分の出身が明かされる不安を強くしてゆき、失意から帰郷を余儀なくされます。そんな西光を放って置けない阪本は、東京工科学校で化学機械学を専攻する際に西光を伴って上京をします。そして、2人で共同生活をしながら部落問題について議論を交わしますが、何の展望も開けませんでした。また、駒井は弁護士をめざして大阪の学校に進学しますが、校内での差別によって中退し、その後は艶歌師となって各地を放浪します。

◆水平社の母体「燕会」

 1917年、柏原に戻った阪本は、自殺願望に傾く西光を元気づけたいという思いも兼ね、柏原青年共和団※に黒潮会という自主グループを組織して、差別のない南洋セレベスへの移住を計画します。さらに、1920年には青年共和団を発展させた「燕会」を結成します。
西光寺
▲西光万吉の生家の西光寺。右手の林が集会場所  燕会は地区行政の民主化や生活防衛のための消費組合の活動を続ける中、部落問題研究部を発足させます。3人を含めた若者たちのメンバーは、西光寺の東側に突き出した小高い丘を集会場所として(メンバーは「建議の庭」と呼ぶ)、社会科学の学習を積み重ねたり、討論をしたりしながら、懸命に部落解放の理論づけや方向性をさぐっていきます。こうしてメンバーは、差別からの解放は自分たちの生活態度の改善や一般の人々の同情に頼ったものではなく、被差別者自体が連帯して挑戦しなければならないという結論に至ります。また、この活動が差別から逃避的であった西光の意識を転換させてゆきます。世は大正デモクラシーの風潮が高まり、労働農民運動が勢力を得ようとしていた時代でした。

*明治大正期の差別を表現するために、文中に「えた」「非人」「新平民」などの差別語を使用いたしました。


◎協力 財団法人 水平社博物館

阪本清一郎
1892年1月7日〜1987年2月19日 全国水平社創立以来、中央委員を歴任して指導力を発揮した。また、ニカワ製造業の経営者、化学者でもある。
西光万吉
1895年4月17日〜1970年3月20日 本名・清原一隆。理論的指導者として運動を牽引した。戦後は独自の不戦和栄政策を提唱。
駒井喜作
1897年5月18日〜1945年11月1日 雄弁家であり、事務能力に優れ、全国水平社創立以降は執行委員として活躍した。
柏原青年共和団
1909年阪本清一郎のいとこの坂本清俊や西光万吉の父親の清原道隆、巽数馬らによって結成された柏原北方の部落の青年組織。他の青年団が忠君愛国の涵養を旨とした活動であったなか、平等や差別撤廃も視野にいれていた。柏原三青年もこの組織の指導者の影響を強く受けて成長した。

◆もっと詳しくお知りになりたい方は
 「水平社博物館」を是非ご見学ください。
住所 奈良県御所市柏原235-2
TEL.0745-62-5588
休館日 毎週月曜日・毎月第4金曜日(ただし、祝休日の場合は開館し、翌日休館)、年末、年始
入館料金 水平社博物館
個人団体
(20人以上)
小学生200円100円
中・高校生 300円 150円
大人500円400円
※障害をもつ方は無料
交通案内 近鉄橿原神宮前駅より「近鉄御所駅」行乗車
近鉄御所駅より「八木駅(神宮駅西口経由)」行乗車
停留所「群界橋(ぐんかいばし)」下車0.5km
又は、JR掖上(わきがみ)駅より1.2km

URL:http://www1.mahoroba.ne.jp/~suihei/

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