マイノリティ女性に対する複合差別

(5)在日コリアン女性が直面する困難
 在日コリアン女性は、国籍差別、民族差別に加え、複合的な性差別を受けている。国政への参政権のみならず多くの場合、地方参政権も持っておらず、「女性の政策決定の場への進出」をいう以前に、そもそも政治と遮断されたところにいる。雇用の場においても、一部の自治体が国籍条項を撤廃しているものの、在日コリアンは公務員になる資格がない場合が多い。在日コリアン女性は就職活動の場においても、雇用者から在日コリアン男性にもまさる複合的な差別を受けている。教育を受ける権利も十分には保障されていない。在日一世の高齢女性は、かつての日本の植民地政策の中で母語を奪われ差別の中に置かれたため、在日一世の男性よりも、日本人女性よりも、非識字率が高くなっている。


(6)雇用が不安定で、教育権保障も不十分な部落女性
 世系(門地)に基づく差別を受けている部落の人々は、とくに結婚と就職においていまだに社会的・経済的に取り残され苦しんでいる。たとえば、2000年に行われた大阪府の部落問題についての自治体調査によると、部落女性の失業率は部落出身でない女性に比べて著しく高い(部落女性:8.2パーセント、大阪の女性:5.6パーセント)。調査から、被差別部落では女性のほうが男性より失業や不安定雇用に苦しんでいる実態が見える。日本経済の不況の結果、被差別部落内の正規雇用率は1990年以降急速に低下した。しかし、正規雇用の男性の割合が78.8パーセントであるのに対し、正規雇用の女性の割合は51.4パーセントにすぎない。
 また、教育の分野においても、被差別部落の女性と、部落内男性・マジョリティ女性との間の大学進学率における格差が存在する。子どもの教育に対する保護者の関心が低いという実態もあり、とくに女の子には高等教育は必要ないと考える保護者も依然として多い。非識字率は減少傾向にあるものの、読み書きに不自由している部落女性は、部落内の男性と比較しても多くなっている。


(7)アイヌ女性のエンパワメント
 政府が1997年制定した「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(以降「アイヌ文化振興法」)が施行された後も、いまだにアイヌ女性は社会的・経済的に取り残された状態におかれている。なぜなら同法は文化的問題のみを扱ったものだからである。日本の先住民族であるアイヌは、不当に奪われた土地や天然資源を回復することなく、構造的差別とその結果である経済的・社会的不利益を、民族集団として被り続けている。生活保護に頼るアイヌの割合は同じ町や地域の日本人住民のそれよりも高くなっている。アイヌの貧困の悪循環は、50歳を超えるアイヌの間での非識字率の高さによっても増幅されている。読み書きができないことによって、そうしたアイヌの人びとは賃金の低い原始的産業や肉体労働をする仕事にしか就くことができない。それは、彼らが自分たちの子どもに、より高度な教育をはじめとする上昇の機会を提供できる経済的資源を持たないことを意味する。アイヌ女性は個人としてだけではなく、アイヌの男性と子どもの妻や母としてこうした事柄の影響を被っている。女性としてと同時にアイヌとして複合差別が及ぶということは、同じ事柄が、アイヌ男性よりもアイヌ女性のほうに深刻に影響を及ぼすということを意味する。


(8) 移住労働者、難民認定申請者、人身売買された女性のヘルスケアへのアクセス
 移住労働者(とりわけ在留資格を持たない)・人身売買被害者・難民認定申請者の場合、日本においては適正な生活水準と医療ケアへの基本的人権は最低限しか守られず、侵害されることもかなり多い。そうした立場にある女性は、リプロダクティブ・ヘルス/ライツも保障されず、社会福祉や無料の医療的ケアが必要なときでさえ、それらのサービスが受給可能な存在として認識されない。というのは、社会保障制度は日本国民と日本に1年以上合法的に滞在する外国人に対してのみ保証されるからである。人身売買の被害にあった女性に関する場合、いくつかの病院とソーシャル・ワーカーによって、とくにHIV/AIDS予防の観点から、外国人性産業従事者に対する無料健康診断を行っているが、ごく限られた地域でのみ実施されているため、サービスを利用できる女性は大変限られている。

 「マイノリティ女性の視点を政策に!社会に! −女性差別撤廃委員会審査を通して」
 発行:反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)、発売:解放出版社発売 
 より抜粋
<< back



同和問題 在日韓国・朝鮮人問題 障害者 性差別 人権全般 外国人その他