マイノリティ女性に対する複合差別

マイノリティ女性に対する複合差別
様ざまな要因が絡み合い、マイノリティ女性に対する複合差別をひきおこしている
(図は要因の一例)
マイノリティ集団

a 世系(門地)を理由に差別・隔離されている被差別部落の人びと。
b 数世代にわたり日本に住んでいる最大の民族的マイノリティとしてのコリアン。
彼らのうち52万890人(2000年現在。政府調査による)が日本国籍を持っていない。
c 日本の主要な4つの島々のうち最も北に位置する北海道に住む先住民族であるアイヌ。
d 日本列島の南部に位置する琉球諸島に住み、先住民族と言われる沖縄の人びと(19世紀に日本に併合されるまで、現在の沖縄県にあたる琉球諸島には琉球王国が存在した)。
e 主としてアジア・ラテンアメリカ諸国からの移住労働者。
f タイ、コロンビア、中国、台湾、韓国、フィリピンなどの国から人身売買され性産業に送り込まれている女性たち。
g 日本人男性と結婚している非日本人女性(その多くが東欧やアジア諸国からの「メール・オーダー・ブライド」である)。

(a) 〜 (d)に掲げたマイノリティ集団、すなわち被差別部落民、在日コリアン、アイヌ民族、琉球(沖縄)民族に対する構造的な差別と剥奪が歴史的に存在するなかで、これらの集団に属する女性の多くが、政治的・公的活動、教育、雇用・職業訓練の機会の制約を受け、低所得による不利益を被っている。いいかえれば、そうした女性たちは「あらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野において・・・・・・女子の完全な能力開発及び向上を確保」されていない状態にある。このような土壌があるからこそ、(e)(f)(g)で挙げたいわゆる「ニューカマー」に対する十分な人権保障がなされないのだといえる。


(1)朝鮮学校に通う少女たちへの憎悪犯罪や暴力
 民族衣装の制服を着た朝鮮学校の女子生徒に対する憎悪犯罪や暴力が2002年9月以降、急増している。これは、20〜30年前に起きた朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」)政府による日本人の拉致をめぐる、日本と北朝鮮の間の政治的論争が引きがねとなって起きたものである。そうした犯罪は過去、日朝間に政治的緊張が生じるたびに繰り返されてきた。しかし、朝鮮学校の周りに警備担当者を配置するといった応急処置以外は、いかなる効果的な予防策もとられてこなかった。それどころか日本政府自体が、朝鮮半島の言語・歴史・文化を教える朝鮮学校の教育を日本の正規の教育として認めず、差別を助長している。人種差別撤廃委員会の最終所見にもかかわらず、日本政府がいまだに差別禁止法を制定していないこともあり、上記のような暴力を防いだり、犯人を逮捕・起訴・処罰する手立ては講じられていない。


(2)沖縄の米軍男性による性犯罪の防止
 第2次大戦中から半世紀以上にわたって、沖縄には米軍が駐留している。そのような状況下、沖縄の女性は米軍男性による強かんや殺戮などの暴力犯罪と人権侵害を被り続けている。あるNGOの調査によれば、1945年3月に米軍が沖縄に上陸して以来、2001年6月までに、米兵による沖縄女性への性犯罪が500件以上確認されている。かつては今以上に被害女性が声をあげにくかったために、実数には程遠いが、それでもこれだけの性犯罪が確認されているのである。いずれにせよ、このデータが氷山の一角にすぎないことは間違いない。
 日本政府は、基地が特に集中する沖縄の女性・少女の安全と人権を確保し、犯罪を防止し、犯人を起訴・処罰するための有効な措置をとってこなかった。このような怠慢は、沖縄の女性・少女が置かれた複合的な差別構造の温存に大きく加担するものである。日米地位協定に女性・少女の安全確保のための措置が盛り込まれるよう、日本政府は早急に対策を講じる必要がある。


(3)ドメスティック・バイオレンスの非日本人被害者に対する支援
 2001年に制定された「配偶者の暴力からの防止及び被害者の保護に関する法律」は日本人でないドメスティック・バイオレンス被害者にも適用されることになっているが、言語の壁や在留資格がないことが障害となって、実際はそうした人びとは公的な保護の枠外に置かれている。彼らはシェルターの不足、医療的・精神的ケアや法的保護の欠如にさらされている。彼らは法律上は不法滞在者・不法就労者の地位にあるため、当局に助けを求めにくい。


(4)人身売買の防止と被害女性への支援
 タイ、コロンビア、中国、台湾、韓国、フィリピンといった国ぐにから多数の女性が、人身売買あるいは密入国の形で性産業へと送り込まれている。この問題に対し日本政府は主として、人身売買業者の訴追へ被害者の協力を求めるのではなく、入国管理を強化し被害者/サバイバーをできるだけ早く強制送還する、という対応を取っている。日本の現在の国内法には、人身売買という行為を禁止する規定がない。売春周旋者やブローカーには、不法就労の斡旋に対する軽い刑罰のみが適用される。雇用者を債務奴隷にすることによって彼らの基本的人権を侵害するという雇用主の行為が有罪にならない一方で、不法就労は行政罰のみならず刑事罰にもなる。被害者/サバイバーには、永続的なものはおろか一時的な在留許可さえも提供されず、安全な避難所や、必要な医療的・精神的ケアを与える措置がとられていない。彼女たちが犯罪者扱いされることが多い一方で、真の犯罪者(人身売買業者)は刑罰を受けることなくその活動を遂行している。
 加えて、人身売買の被害に遭い性産業に従事している女性は常にやくざの監視下におかれ、大使館や彼女たちの顧客による援助・協力があった場合を除き、一時保護施設へ避難できる女性の数は極めて限られている。(売春防止)法は都道府県に婦人相談所の設置を義務付けていて、それらが2001年の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の成立により配偶者暴力相談支援センターの機能を持つようになった。しかし、これらの施設は、特に日本語以外の言語によるサポートという面で、人身売買の被害者である外国人女性を受け入れられる機能をいまだに持ち得ていない。結果として、外国人女性を受け入れているのは一部の民間シェルターに過ぎない。
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