基礎知識


悪徳商法の被害から守る「成年後見制度」

 最近、高齢者や判断能力の不十分な人に、次から次へと必要のない契約を結ばせるなど、悪質な事業者による消費者トラブルがおおきな社会問題となっています。このため、内閣府や法務省などでは、重点項目を決め対応策に努めています。
 @ 悪質事業者の排除
 A 高齢者の見守り強化
 B 情報提供の強化
 C 消費者に対する被害救済の強化
 D 成年後見制度の利用促進
 以上5つの中で、特に被害防止の観点から、成年後見制度の利用が注目を浴びています。成年後見制度とは、認知症や知的障がいなどの理由で判断能力が不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のための介護などのサービスや施設の入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。

 成年後見制度は、大きく分けると次の「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。
(1)法定後見制度とは
 法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。
 法定後見制度においては,家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護・支援します。
   ・後見   家庭裁判所が選任した成年後見人が本人の利益を考えながら、
          本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人または成年後
          見人が、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことがで
          きます。
   ・保佐   お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で
          定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人
          の同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでし
          た行為については、本人または保佐人が後から取り消すことがで
          きます。
   ・補助   家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について家庭裁判所
          が選任した同意権・取消権や代理権を与えることができます。

<法定後見制度の概要>

  後 見 保 佐 補 助
対象となる方 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
申立てをすることができる人 本人、配偶者、4親等内の親族、検察官など市町村長
成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)同意が必要な行為 民法13条1項所定の行為(注1)(注2) 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民法13条1項所定の行為の一部)(注2)
取消しが可能な行為 日常生活に関する行為以外の行為 同上(注2)  同上(注2)
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(注3)  同左(注3)

(注1)家庭裁判所の審判により、民法13条1項所定の行為以外についても、同意権・取消権の
    範囲を広げることができます。
(注2)日常生活に関する行為は除かれます。
(注3)保佐人や補助人に代理権を与える審判を申し立てる場合、本人の同意が必要になります。
    補助開始の審判を申し立てる場合も同じです。

○後見事例

本人の状況:アルツハイマー病 ・申立人:妻 ・成年後見人:申立人
概要
 本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰かわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。日常生活においても、家族の判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく、2年前から入院しています。
 ある日、本人の弟が突然事故死し、本人が弟の財産を相続することになりました。弟には負債しか残されておらず、困った本人の妻が相続放棄のために、後見開始の審判を申し立てました。
 家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始され、夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は相続放棄の手続をしました。


○保佐事例

本人の状況:中程度の認知症の症状 ・申立人:長男 ・成年後見人:申立人
概要
  本人は1年前に夫を亡くしてから一人暮らしをしていました。以前から物忘れが見られましたが、最近症状が進み、買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか、分からなくなることが多くなり、日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになりました。隣県に住む長男は、本人が住んでいた自宅が老朽化しているため、この際自宅の土地,建物を売りたいと考えて、保佐開始の審判の申立てをし、併せて土地,建物を売却することについて代理権付与の審判の申立てをしました。
 家庭裁判所の審理を経て、本人について保佐が開始され、長男が保佐人に選任されました。長男は、家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け、本人の自宅を売却する手続を進めました。

○補助事例

本人の状況:軽度の認知症の症状 ・申立人:長男 ・成年後見人:申立人
概要
 本人は、最近米をと研がずに炊いてしまうなど、家事の失敗がみられるようになり、また、長男が日中仕事で留守の間に、訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまいました。困った長男が家庭裁判所に補助開始の審判の申立てをし、併せて本人が10万円以上の商品を購入することについて同意権付与の審判の申立てをしました。
 家庭裁判所の審理を経て、本人について補助が開始され、長男が補助人に選任されて同意権が与えられました。その結果,本人が長男に断りなく10万円以上の商品を購入してしまった場合には、長男がその契約を取り消すことができるようになりました。

(2)任意後見制度とは
 任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人 (任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約 (任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。


※内閣府、法務省ホームページ資料より

 





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