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今から21年前の夏、その日は、とても暑い日だった。モデルになって2年目の私は、朝9時から、甲府の桃園で撮影をしていた。ある脚立メーカーのポスターの仕事だった。撮影は順調に進んで、午後1時には終わってしまった。その後、東京を目指して車に乗り込んだ。運転はカメラマン、助手席には男性のデザイナー、私は後部座席で居眠りをしていた。31歳になったばかりのデザイナーは、もうすぐ誕生する第二子がおなかにいる妻と2歳の坊やにおみやげにしたいと、もらった大きな桃が、2つ。いい香りが車中に広がっていた。 |
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恋人のノブが救急病院に駆けつけた。顔が膨れあがって、頭を刈り上げられた私を目の前にみてもそれが本人であるとは、わからなったという。いろいろな事故の救急で運ばれた人たち4人がいたが、翌日まで生きていたのは私だけだった。日付が1日変わり、より設備の整った病院へ移されることになった。ノブは救急車に同乗して、手をずっと握りしめていたらしい。私は意識が朦朧として覚えていないが、ときおり目を覚ましては泣いていたそうだ。その涙が点滴と同じ黄色い涙だったという。 |
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それからの私は「どうやって死ねるだろうか」ということばかりを考えていた。後にこのときの心理を分析すると「足が動かないイコール死にたい」ではないのだ。足が動かないことによって、誰からも必要とされなくなったに違いない、半人前の人間なのだ。だから人間としての価値が落ちた、と自分を卑下する。それが死を結びつけた。
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