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| 「性]の構造図を描いてみると、性的多数派の人たちにはわかりにくい性的少数派(マイノリティ)の「性」の有り様も理解しやすくなります。たとえば、生得的な身体の性とは逆の社会的性別を生きるトランスジェンダー(性別越境者)と、ゲイやレズビアンなどの同性愛者とは、混同されることがしばしばあります。両者の差異を考えてみましょう。
図4に、ゲイの男性と男から女へのトランスジェンダー(Male to Female Transgender=MTFTG)、及びレズビアンの女性と女から男へのトランスジェンダー(Female to Male Transgender=FTMTG)の構造図を並べてみました。 同性愛者とトランスジェンダーが、まったく異なる構造であることが一目で理解できると思います。ゲイ/レズビアンでは三層構造は、多数派の男性/女性と変わりなく、「性的自己」の整合性は保たれていて、同じ色のアイスクリームの三段重ねにたとえられます。ただ性的指向の矢印が向かう先、つまり、アイスクリームを誰に食べて欲しいかという対象の性だけが多数派と異なっているのです。
それに対して、トランスジェンダーでは、三層構造の重なりにずれが存在します。心の性と身体の性、及び心の性と社会的性との間の二か所に不一致が生じていて「性的自己」内部の整合性が失われています。三段重ねのアイスクリームが、バニラ、チョコレート、バニラのように重なっているイメージです。この点こそが多数派の男性/女性や同性愛者と最も異なるトランスジェンダーの特質です。 MTFTGの場合は、身体の性や社会的に要求される性が男性であるのに、心の性が女性なのです。性的指向は男性に向かう人(心理的には異性愛)が多いものの、女性に向かう人(心理的にはレズビアン)もかなりの比率で存在します。FTMTGでは、身体の性や社会的に求められる性が女性であるのに、心の性が男性なのです。性的指向は女性に向かう人(心理的には異性愛)が圧倒的多数で、男性に向かうこと(心理的にはゲイ)は稀です。 こうした「性的自己」の各層間の不一致から生じるのが性別違和感(Gender Dysphoria=GD)です。性別違和感を持つトランスジェンダーが、違和感を和らげ、心の性(性自認)に従って自分らしく生きようとすれば、社会的性を心の性に一致するように転換していくことになります。つまり、身体が男性でも女性として、あるいは身体が女性でも男性として社会的に活動していこうとするのです。 性別違和感が強まって社会生活に支障をきたすような場合は、性同一性障害(Gender Identity Disorder=GID 精神疾患の診断カテゴリー)として医学的治療の対象になります。治療としては、精神療法(カウンセリング)、ホルモン療法(望みの性のホルモンを投与)、手術療法(性器などを望みの性に近づけて形成=性別適合手術)が行われています。 しかし、性別違和感があるからといって直ちに「病気」だとは言えません。性別違和感に自らの手で折り合いをつけながら社会的活動を続け、社会に貢献することは十分に可能なのです。それは私の履歴を見ていただければ、おわかりになると思います。 |
実は、性的少数者に最も冷淡だったのは企業社会です。性別越境者が一般企業に就労することはほとんど不可能でしたし、ゲイやレズビアンも企業社会の中でしかるべき地位を確保しようとするなら、自らの性的指向をひた隠しにするしかありませんでした。 今まで企業社会は、部落差別、民族差別、障害者差別、女性差別などに取り組み、当事者の人権を擁護する方向で努力がなされてきました。そうした中で最後まで残された差別が、性的少数者への差別なのです。 二一世紀の日本は、労働人口が減少していくと予想されます。そうした中では、今までのように性的少数者を「門前払い」的に企業社会から排除することは、企業の利益にとっても有益な方策とは思えません。性的少数者にその能力や適性を発揮する場を与える柔軟な感性と人権意識をもつことが、二一世紀を生き延びる企業には必要だと思います。 これからの日本は、多様な「性」の有り様をもつ人たちが共に生きることができる社会にしていかなければなりません。そのためにも企業の意識転換が強く望まれるのです。 |
| 多様な「性」を考える (その1)> |