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性別には、男性と女性しかない、男性は男らしく、女性は女らしく、男性は女性を好きになり、女性は男性を好きになる。それは当たり前のことであり、そうでなければならず、それから外れるものは「変態」であり、真っ当な社会からは排除しなければならない。近代社会では長らくそうした考え方が常識とされてきました。性別二元制と異性愛を絶対視する考え方です。 しかし、近代以前の日本はもっと「性」に対しておおらかな社会でした。江戸時代の美人画の第一人者鈴木春信が描く「江戸三美人」では、女性二人を左右に従えて中央に立っているのは女形の瀬川菊之丞です。現代の私たちには、女優とニューハーフを組み合わせた「三美人」という構図はなかなか思い浮かびません。 江戸時代の庶民は、生まれつきの女性と女装の男性とを並べて「三美人」として鑑賞できる、性別についての柔軟な感性をもっていたのです。あるいは「女色」と「男色」とどちらが優れているか、などという論議がけっこうまじめに交わされていたりしました。 日本社会は、いつの間にかそうした「性」に対する柔軟さを失ってしまい、冒頭に記したような硬直した姿勢に凝り固まってしまったのです。それは、効率だけを重視し、画一さを求める近代産業社会の進展にともなう現象でした。そして、「性」に対する硬直した姿勢は、現代の企業社会にも受け継がれているのです。 こうした硬直を解きほぐすためには、今まで「当たり前」とされてきたことを、もう一度、考え直すことから始めるのが効果的です。「性」とは何なのか? どのようにイメージすればよいのか。ここでは、最も理解しやすい「性」の構造的な考え方をお話しましょう。 |
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人間の「性」は主に次の四つの要素から成り立っていると、私は考えています。
そして
「性」の四要素それぞれに男・女いずれかを配したら、その組み合わせは何通りになるでしょうか。それは二の四乗、つまり一六通りになります。人間の「性」はそれだけ多様なのです。 |
人間の「性」は、立体的な多層構造としてイメージすることができます。私は、図1のように一番深層に身体の性、次の中層に心の性、そして表層に社会的性が重なる三層構造が「性的自己」を構成し、そこから「性的他者」に向かうベクトルが対象の性(性的指向)という形を描いています。 次にこの基本構造図を使って多様な「性」の有り様をイメージ化してみましょう。
こうした「性]の構造図を描いてみると、性的多数派の人たちにはわかりにくい性的少数派(マイノリティ)の「性」の有り様も理解しやすくなります。たとえば、生得的な身体の性とは逆の社会的性別を生きるトランスジェンダー(性別越境者)と、ゲイやレズビアンなどの同性愛者とは、混同されることがしばしばあります。両者の差異を考えてみましょう。
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