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読者のなかにはこの文章のタイトルを見て、「ジェンダーって何だ」という方もおられるかもしれません。まだまだ聞き馴れない言葉だと思います。というわけで、まずはこの言葉の説明から始めたいと思います。 ジェンダーという言葉は、もともとは言語学の用語として用いられてきました。ヨーロッパの言語を学んだ経験のある方は、ちょっと思い出してください。フランス語にもドイツ語にもイタリア語にも、「女性名詞」「男性名詞」などがあります。こうした言葉における性別表現が、ジェンダーのもともとの意味だったのです。 もともと文法用語だったこのジェンダーという言葉が、最近では、ちょっと違う用いられ方をするようになりました。男女という社会的・文化的な枠づけを意味する言葉として用いられるようになるのです。つまり、「男ならこうすべきだ」とか「女だからそれは無理だ」といった、個人の能力や特性ではなく、性別による固定的な決めつけにかかわる言葉として、このジェンダーという語が使われるようになるのです。今では、「文化的・社会的に作られた性別」という意味合いで、このジェンダーという用語は一般に使用されるようになっています。「性別による決めつけは、生まれつきのものではなく、社会や文化によって生み出され押し付けられたものだ」という含意がそこにはあります。付け加えれば、このジェンダーに対して、生物学的な性差を意味する言葉としてセックス(セックスという言葉にもいろいろな意味合いがありますが、ジェンダーと対になる用語としては生物学的性差の意味で使用されます)という言葉が使われています。
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よく見ていくと、生物学的性差を意味するセックスも簡単に男女(あるいはオス・メス)の二分法では分けられない多様性があります。たとえば、性染色体です。女性はその多くがXX染色体をもちますし、男性は一般にXY染色体をもちます。ところが、X染色体が三つある人やひとつしかない人、さらにY染色体が二つある人など、染色体の面でも簡単に人間を二つに分類できないのです。いわゆる男性ホルモンや女性ホルモンの分泌や、卵巣や精巣などの内性器やペニスやワギナなどの外性器においても、多様性があります。なかには、精巣と卵巣の両方をもっていたり、外性器がペニスやワギナの双方の特徴を備えていたり、さらに外性器と内性器の性が一致しないといった人もいます。いわゆるインターセックスの人たちです。今までほとんど無視されてきたこうしたインターセックスの人が少しずつ声をあげはじめています。 また、最近ではいわゆる性同一性「障害」の方の話題もよくニュースになります。性同一性「障害」とは、自分の性自認(ジェンダー・アイデンティティー=自分が男女どちらの性別をもつかという認識)と身体的・生物学的性が異なっているケースです。生物学的には女性(あるいは男性)でありながら、自分では男性(あるいは女性)であるという思いが強い人などはこのケースにあたります。日本でも、現在では、こうした人たちに対して、いくつかの大学病院などで性転換の手術も行なわれるようになっています。 人権ということでは、今後、同性愛(ホモセクシャル)ないし両性愛(バイセクシャル)の人々の権利擁護の動きが強まっていくことも予想されます。確かに、多くの社会では、異性愛(ヘテロセクシャル)の人、つまり男性なら女性に、女性なら男性に性的な感情を抱く人が多数派です。しかし、『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス)にも書かれているように「90人が異性愛者です。そして、10人が同性愛者です」といわれています(おそらくアメリカ心理学会のデータをもとにした数字でしょう)。人口の一割といえば、ごく少数派というわけではありません。この一割人々が同性愛(あるいは両性愛)者であることで、差別や偏見を受けるなら、これは社会的にきわめて重大な人権問題ということになるでしょう。現在日本政府が準備中の人権擁護についての法律でも、この同性愛者の人権への配慮がなされる予定だと聞いています。
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