テレビや新聞に見るジェンダー
テレビのニュース番組のメインキャスターが女性である景色も、珍しくはなくなった。しかし、女性がメインだと、少し年配の男性がコメンテーターについていたり、相変わらず年配男性がメインキャスターで、若い女性がサブキャスターというニュースも多い。
女性のキャスターが、ニュースを淡々と伝える役割に徹するか、そのニュースはどういうことなのか、あるいはどうしてなのかと疑問を呈したり、相槌を打ったりする役割をつとめるのに対し、男性キャスターや男性コメンテーターが解説やコメントを加えたりする。
少なくとも、女性と男性が一貫して逆の立場の役割を果たしているニュース番組はほとんどないのではないだろうか。
全国紙の一面に、ときどき季節の風物詩といったたぐいの写真が載るが、人物が被写体の場合、たいていは女性である。
一面の主な記事の主役がほとんど男性なので、バランスをとるために女性を登場させているのだろうか。それよりは、硬いニュースのなかに、軽い息抜きとして配置された、そうした写真で紙面の彩りとなるのは女性がふさわしいと、新聞の紙面制作者が考えており、出稿者もそうした写真を撮ることが慣習化しているのだろう。
現実には、女性のほうがよくわかっていて、男性が教えを乞うという関係もありうるし、風物詩として扱われる情景の現場には男性もいるだろう。しかし、メディアが提示するこうした女性・男性の役割の構図を、視聴者・読者は、なんとなくおさまりがよく自然なことと受けとめがちかもしれない。
このように女性と男性に課せられる異なった役割や「女らしさ」「男らしさ」とされるものをジェンダーという。男女それぞれに期待され、実際にもしばしば遂行している役割や「らしさ」は、人間に生まれつき備わっているのではなく、社会のなかで、そのように方向づけられ培われるものだ。人類の生物学的な特徴ではなく、社会的なものだから、国や文化によって、また時代によって、その中身は異なったり変化もする。
現代にあっては、マスメディアは人々に共通のイメージを提示することで、ジェンダーを作り出しもすれば、既存のそれを強化再生産する役割も果たしている。
ジェンダーの核心
現代社会で、ジェンダーの核にある女性・男性の役割は、男性は活動の主体となり何かを成し遂げること、女性はそれを助けケアすることである。仕事ができて一人前とされ、どれだけ自分の力でがんばり競争に打ち勝てるかが、男性というジェンダーの核心である。女性のジェンダーの核にあるのは、そういう男性や、一人前の働きをできない子どもや病人、高齢者などを世話したり癒したりすることである。
男性が主役で、女性は脇役、サポート役というのが、ジェンダーの構造なのである。
女性がやさしく、よく気がつき、協調性があるなど、いわゆる「女らしさ」を備えており、男性がたくましく、勇敢にものごとに挑戦し、リーダーシップがあるなど、いわゆる「男らしさ」を備えているから、それぞれの役割がふさわしいのだと思われているかもしれない。しかし、その関係はどうも逆で、まず女性・男性の役割の分配があって、それにふさわしい性格などが、「女らしさ」「男らしさ」とされてきたようだ。
実際にも、女性のほうが「女らしさ」を、男性のほうが「男らしさ」を備えている人が多いとしたら、それは人間社会が、そうした性別の役割期待をし、女性・男性がそれに沿った経験を積み重ねるなかで、そうした「らしさ」を備える傾向が強くなったのである。もちろん、「らしさ」からはずれる女性・男性は少なくない。
ジェンダーフリーな社会の必要
これからの社会では、女性と男性に異なる役割期待をかけ、社会活動の領域によって、女性を排除したり、男性を排除したりするようでは、すべての人が個性を最大限に発揮して、一生を通じ生き生きと暮らすことはできないだろう。また、社会の各領域―たとえば政治、学問、科学技術、マスメディアなど―によって、担い手が女性あるいは男性に偏っていると、その領域を支配するものの見方や価値観が偏り、各領域の影響を受ける女性・男性の双方にとってマイナスである。
だから、二一世紀の社会は、こうしたジェンダーの枠で人間を見ることをやめ、それに縛られないジェンダーフリーな社会をめざすことが求められている。
しかし、長いこと、ジェンダーの枠にとらわれた人間観をもって生きてきた私たちは、ついジェンダーを自然なこととみなしがちで、意識的に努力しないとそれから自由になるのがむずかしい。その意味で、今日のメディア社会では、大量のマスメディア情報で日々提示される、本稿の冒頭に例示したようなジェンダーは、人々がそれを自然なこととみなし、自明視することを助長しかねない。
そういう目で、テレビ・新聞・雑誌・広告などについて、どのような形でジェンダーが提示されているかを点検することは、ジェンダーに敏感になり、ジェンダーフリーをめざすためにも有益だろう。
以下、企業活動と関係の深い広告やポスター、広報などを題材にメディアのつくるジェンダーを、3つの視点から考えてみよう。
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