![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
●厳存する結婚差別私は、大学の「社会調査法」の調査実習で、毎年、学生たちと被差別部落を訪ね、聞き取りをさせてもらっている。以下は、1996年、栃木県佐野市内のある被差別部落在住のFKさん(1949年生、聞き取り時点で46歳)の語りの一部である。FKさん自身は部落出身ではない。栃木県内の別の町に生まれ育ち、成長するまで部落問題はほとんど知らなかった。しかし、ある男性との結婚を望んだとき、家族親戚中から執拗な反対を受けた。理由は「方角が悪い」「年回りが悪いから、絶対ダメだ」というものであった。「駆け落ち」し「勘当」されて、一緒になった。 住み着いた佐野市内の地区が「部落」であることを彼女が知ったのは、子どもを出産する前日であった。夫が、涙ながらに、「じつは、うちは部落なんだ」と打ち明けたのだ。「生まれてくる子どもが、結婚するときに、また反対されたらどうする?」と夫が言い、「私みたいな人をもらうか、そういう人のところへ嫁に行けばいいじゃない」と彼女は答えた。 FKさんの語りがつづく。
●住民意識調査私は、千葉県内のM市、N市、S町が1997年度に千葉県人権啓発センターに委託した「人権問題に関する住民意識調査」を担当することになった(調査対象者は20歳以上の男女で、郵送法による調査。有効回収サンプル数は3015。有効回収率は45.2%)そこで、いまだに被差別部落出身者との結婚に難色を示す人は、どのような考えの持ち主に多いのか、また、これまでの学校での同和教育と行政や企業による社会啓発が、結婚問題で人びとが差別的態度をとることをなくす点において、どの程度の効果を発揮してきたのかに焦点をあてて、意識調査を実施することにした。 以下、調査結果の骨子を報告したい。 「もし仮に、恋愛をし、結婚をしようと思っている相手が同和地区の出身だとわかったとします。その場合、あなたならどうすると思いますか」と独身者にたいして尋ねたところ、回答の結果は、「相手の出身など、まったく問題にしない」47.8%、「迷いながらも、結局は結婚の意志を変えないだろう」36.4%、「迷った末、結局は考え直すだろう」11.6%、「考え直す」4.2%であった。 一方、「もし仮に、あなたのお子さんやお孫さんが恋愛をし、結婚したいといっている相手が同和地区の出身だとわかったとします。その場合、あなたならどんな態度をとると思いますか」と非独身者にたいして尋ねたところ、回答の結果は、「相手の出身など、まったく問題にしない」29.8%、「迷いながらも、結局は本人の意志を尊重するだろう」51.7%、「迷った末、結局は考え直すように言うだろう」14.2%、「考え直すよう強く言う」4.3%であった。 ●結婚差別を支える意識の構造ひところとくらべ、こんにちでは、コンピュータによる複雑な分析がいとも簡単にできるようになった。表1に示したのは、さまざまな意識のありようが「結婚問題への態度」にどの程度の影響を及ぼしているかを分析した重回帰分析の結果である。なお、ここでは、「結婚への態度」は、前述の独身者にたいする質問と非独身者にたいする質問の回答を合成したものを用いている。 統計的分析についてあまり馴染みのない人のために、重回帰分析とはどんなものかを説明しておこう。たとえば、同和教育を受けた人ほど差別意識がないという相関関係が認められたとする。しかし、同和教育を受けたことのある人は若い世代に多いという現実がある。一方で、高齢者のほうが差別意識が強いということがあったとする。そうすると、同和教育の経験と差別意識の強弱のあいだに相関関係が認められたとしても、それだけでは同和教育の効果があったかどうかはわからない。同和教育を受けたことのある人にはもともと差別意識が少ない人が多かったために、そういう結果が出ただけかもしれないからである。重回帰分析とは、差別意識の強弱と同和教育経験と年齢といったさまざまな要因を一度に分析にかけることで、相互の影響を取り除いて、同和教育経験の効果をより純粋にとりだしてくれる、という便利な分析法なのである。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 目次へ |