|
![]()
典型的なケースを紹介してみましょう。 中学生のA子さんは、一年に入学した時から、いじめに会いました。 クラスの男の子数名が、毎日彼女を取り囲み、「ばか、ばか、ぶた、ぶ た」などとはやしたてます。消しゴムのかすを頭に振りかけたり、絵の 具や雑巾を洗った水を制服にかけます。A子さんが泣くと、「涙は塩酸。 そばに近寄るととけるぞ。」と追い討ちをかける。彼女のさわったもの は、ばいきんがついたといって、誰もさわらない。彼女が配った給食に は誰も手をつけない。 怒して担任に訴えました。担任の若い男性の 教師は、まじめにこの訴えを受け、加害者ら から事情聴取をしました。加害者らの保護者 を呼んで、事実を説明し、子どもたちに二度と同じ事をしないと約束さ せました。子どもたちは、先生と親の前で、A子さんと握手をしました。 これでいじめは一件落着かに思えたのです。 ところが、親や先生に告げ口をしたA子さんをクラスメイトは許しま せんでした。子どもたちの間では、「親にちくったら5倍。先生にちく ったら10倍」という合言葉があるといいます。つまり告げ口をしたら、 5倍、10倍にして報復するよという意味なのです。A子さんの場合も そうでした。 今度は、先生にも絶対わからない方法でのいじめが始まりました。 まず、「しかと」です。クラスの誰もが彼女を無視するのです。「おは よう」と声をかけても、「今日の宿題何だっけ」と聞いても誰も答えて くれない。A子さんが、あたかもそこにいないかのように、皆がふるま うのです。毎日毎日これをやられる子どもの気持ちがどれほど辛いかは、 想像に難くないと思います。 またいじめの典型のひとつに、本人が嫌がる役割を強引に押しつける というものがあります。A子さんの場合は、苦手な体育の時間、クラス メイトの策略でサッカーのゴールキーパーに選ばれてしまいました。目 立つ場所に立って、ボールをぶつけられなければならないことが、とて も辛かったと話していました。 A子さんは、担任にもう一度訴えました。担任は、クラスの学級委員 の女子生徒を呼び、そのような事実があるのかと尋ねました。「そんな ことありません。A子さんの思い過ごしです。仲良くしましょうね。」 というのが、彼女の対応でした。担任は、A子さんの側に問題があると 考えるようになってしまいました。それ以後、いくらA子さんや母親が 相談しても取り合ってもらえなくなりました。 A子さんは三学期、朝になると腹痛、微熱ために、学校へ行けないと いう状態になってしまいました。医者へ行き、薬をもらい、夕方になる と元気になる。明日こそと思って準備をするのだけれど、朝になるとま た登校できない。その状態が次第にひどくなり、二年、三年とほとんど 学校へ行けないまま卒業することになってしまったのです。 体質、厳しい校則管理、何事につけても競争原理を 持ち込む教育方針、数年前から続くいじめの実態な どが、明らかになりました。 このような学校の中で不満が鬱積し、大人に抗議することのできない子 どもたちが、誰かを標的にして、いじめという形で憂さ晴らしをすると いう構造が、大変よく見えたのです。
|