「インターネットを悪用した人権侵害」

 近年のIT社会においては、インターネット上で特定の人に対する差別発言、いわれのない誹謗・中傷などの書き込みにより、個人の人権やプライバシーが侵害されるなど、インターネットを悪用した人権侵害が年々増加しています。だれもが安心してインターネットでコミュニケーションできる環境づくりは、一人ひとりがモラルとマナーを守ることから始まります。

◆インターネットを悪用した人権侵害事件
 日本のインターネット利用者は、2004(平成16)年末には約7,900万人にといわれています。インターネットは、「知りたい情報をすぐに手に入れることができる」「世界中の人と気軽に交流できる」などさまざまな利点があります。
 インターネット上では、個人がだれでも情報を発信できるうえ、匿名による書き込みが可能です。しかし、こうしたインターネットの特性を悪用して、人を傷つけようとする悪意のある情報、うわさや思い込みなどの間違った情報、他人の個人情報などがホームページに掲載され、個人の名誉やプライバシーを侵害する事件がおきています。
 法務省の人権擁護機関が2005(平成17)年中に取り扱ったインターネットを悪用した人権侵害の事件は272件と、前年に比べ、36.7%増えています。


※1 法務省人権擁護局2006(平成18)年3月30日発表
※2 法務省人権擁護局ホームページ(平成17年度「人権侵犯事件」の状況について参照)
   <http://www.moj.go.jp/PRESS/050520-1/050520-1.html>

 

◆インターネット上の人権侵害を救済・防止するための法的な対応
 インターネットの悪用により人権侵害の被害に遭った人を救済することを目的に、2002(平成14)年5月に「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、プロバイダ責任制限法という)」が施行されました。

  この法律では
被害者からの削除要請を受けてプロバイダ(インターネット接続会社)などが問題となる情報を削除した場合には、プロバイダは情報の書き込みをした者から「表現の自由を侵害した」と訴えられたとしても責任を問われない。
プロバイダが免責されるのは、「他人の権利が侵害されていると判断できるとき」という条件。
などが定めてあります。

 この法律の施行を受けて、プロバイダ責任制限法ガイドライン等協議会(プロバイダ団体等によって構成)では、情報を削除するかどうかの判断基準や削除要請への対応方法をまとめた自主的ガイドライン「プロバイダ責任制限法名誉き損・プライバシー関係ガイドライン」を作成しました。
 2004(平成16)年10月には、人権侵害の被害者本人が被害の回復予防を図ることが難しい場合には、法務省の人権擁護機関が同ガイドラインに則って、本人に代わりプロバイダなどに情報の削除を要請することができるように、ガイドラインの一部が改正されました。

◆人権侵害を受けた際の対応策
ホームページや掲示板上で、プライバシーの侵害や差別発言を受けるなどの人権侵害を受けた場合には、

(1)情報の発信者や情報を掲載しているホームページの管理人やプロバイダに記事の削除を求めることが必要です。
・掲示板などに削除要請を書き込むことは、相手に無視されたり、関係のない議論に巻き込まれたり、削除する代わりに何らかの要求をされたりするなどの場合があるため、好ましくありません。
(2)個人で解決できない場合には、法務局・地方法務局などの窓口に相談することが大事です。
・法務省の人権擁護機関では、ホームページや掲示板上で、名誉き損やプライバシー侵害をはじめ、嫌がらせなどの不当な差別的書き込みなどによる被害の申告を受けた場合に、記事の削除依頼の仕方などを助言しています。また、個人で被害の回復をするのが困難であると判断されたときは、個人に代わって人権擁護機関がプロバイダなどに問題の情報の削除を要請するなどの対応をしています。

◆インターネット利用時のモラルとマナーを守る
 私たちは、さまざまなルールやマナーを守って暮らしています。インターネット上の世界においても同様に、決められたルールやマナーを一人ひとりが遵守することが大切です。
ホームページの作成、閲覧の際に必要となる注意点は次のとおりです。

□ホームページの作成
・不特定多数が閲覧するホームページに、他人を傷つけるような内容や誤った情報を掲載することはモラルに反するとともに、場合によっては不法行為などの民法上の責任を問われたり、名誉き損罪や侮辱罪などの犯罪になります。
・氏名や顔写真など他人の個人情報や、文章や写真などの著作物を無断で掲載することは、プライバシーや著作権の侵害にあたります。ホームページを作成し、これらの情報を掲載する際には、本人の許可を得ることが必要です。
 
□ホームページの閲覧
・ホームページに掲載されている情報の取捨選択は利用者の責任によります。
・掲載されている記事の信頼性の判断には、「ホームページ作成者の連絡先が記載されている」「文章中の引用や出所が明記されている」「比較的長い期間、運用されている」などの点を目安にすることが必要です。

 
□掲示板などへの書き込み
・掲示板に他人の氏名、住所、電話番号などの個人情報を書き込むことは、プラ イバシーの侵害であり、民法の不法行為にあたります。その書き込みにより、ストーカー犯罪などに発展する可能性もあります。
・差別的発言など相手を傷つける発言をしたり、 他人になりすまして掲示板に投稿したり、うその情報を書き込んだりすることもモラル違反であるとともに、場合によっては民法の不法行為にあたり、名誉き損罪や侮辱罪などの犯罪になります。

 モラルやマナーを守ることは、インターネット利用者の義務です。一人ひとりがお互いの人権を尊重し、インターネット上での安全なコミュニケーションを目指すことが大事です。

※政府広報、法務省人権擁護局ホームページ等より