在日コリアンの人権について(5)

【在日コリアンの戦後補償について】

(15)在日コリアンの旧日本軍人・軍属へは恩給はないのですか?

 1952年、サンフランシスコ平和条約が発効し、日本は独立を果しました。独立した日本政府の最初の取り組みは、「戦傷病者戦没者遺族等援護法」などの制定でした。これは第二次世界大戦において軍人・軍属として従軍した人や、その遺族に対する補償を定めたものです。この補償の対象は、「日本国籍を有する者」「戸籍法の適用を受ける者」に限定されていたため、24万2千名におよぶ旧植民地出身者は除外されたのです。
 このような取り扱いに対して鄭商根(チョン・サングン)さんと2名の在日コリアンがその不当性を裁判に訴えましたが、判決は、合法的であるというものでした。その後の裁判においては、援護法の取り扱いが「立法府の裁量」によるとして、裁判所の判断が避けられています。
 2001年4月、「平和条約国籍離脱者」遺族などへの弔慰金等支給法が成立しました。この法律は旧植民地出身者が援護法から排除されてきたことへの配慮として制定されたものです。その内容は、戦没者遺族へ260万円、戦傷者本人へは見舞金・老後生活設計支援特別給付金として400万円を支給するというものですが、2004年3月31日限りで失効するという時限付きでした。
 ちなみに、日本軍の軍属として東南アジアなどの戦地に赴き、右目の視力と右手の親指以外を失った滋賀県在住の姜富中(カン・ブジュン)さんと同等の戦傷をうけた日本人には、これまでに7,000万円以上の年金を支払われているのに対して、姜富中(カン・ブジュン)さんは400万円を受け取っただけです。

(16)強制連行され、軍事施設や民間企業で働かされた在日コリアンへの補償は?

  第二次世界大戦中、日本は朝鮮から70万人とも100万人ともいわれる朝鮮人を強制的に連行し、女子挺身隊や男子報国隊などの名のもとに強制労働に従事させました。
 このような強制労働に対してまともなかたちでの賃金は支給されませんでした。寝食分を給与から天引きしたのち、逃亡を防ぐ目的で、「残金は強制的に貯金に回す」とか、「故郷の家族へ送金する」といいながら、実際は送金しないなどが一般的だったといえます。
 1992年、強制労働に従事させられながら、賃金の支払いを受けられなかった韓国在住の3人の被害者が賃金訴訟を起こしました。長い裁判のすえ、2000年7月に、最高裁において和解が成立し、未払い賃金、慰謝料など2,000万円が原告に支払われることになりました。これ以前にも和解にたどりつけたケースはありますが2例で、決して多くはありません。
 朝鮮人強制労働に対する補償責任は、21世紀に入ってやっと問われ始め、解決のきざしが見え始めたといえるでしょう。

(17)「従軍慰安婦」について教えてください。

 国連人権委員会の調査団報告(クワラスワミ団長)のなかでは、「従軍慰安婦」という用語のかわりに、「性奴隷」という用語が使われています。
 アジア侵略の戦争を遂行するうえで軍人・軍属の士気高揚と性病予防のため、多くの朝鮮女性がだまされたり強制的に、「性奴隷」にされたといわれています。
 中国や東南アジアなどで軍の管理下にあったこのような女性たちで、幸運にも生き残って祖国に帰れた彼女たちは、過去を隠しながら社会の底辺で過酷な生活を強いられたのです。
 1991年、韓国在住の「元従軍慰安婦」金学順(キム・ハクスン)さんたち3名のハルモニ(おばあさん)が日本政府を相手取り東京地裁に提訴しました。その後、在日コリアン、フィリピン人、中国人、台湾人、オランダ人などの「元慰安婦」の提訴が相次ぎましたが、すべての裁判において原告側の損害賠償請求は棄却されています。
 冒頭の国連人権委員会からは、1996年、調査報告書が出され、日本軍の行為を「人道に対する罪」と断定しています。
 また、上記の報告書のなかで日本政府がこの問題に対して法的責任を認知し、被害者個人へ補償することや、加害者への追求と処罰を行うようにと勧告されましたが、日本政府は応じていません。

【在日コリアンへのいじめについて】

(18)在日コリアンに対し、最近どのようないじめがあるのですか?

 2002年9月、日朝首脳会談において北朝鮮が日本人拉致を認めて以来、在日コリアンに対する暴行・暴言・嫌がらせ行為が急増しています。特に民族学校に通う生徒たちへのそのような行為が頻発しています。
 ある弁護士グループのアンケート調査によれば、朝鮮学校に通う生徒の5人にひとりが暴行・暴言などを受けているという実態が明らかになりました。蹴られたり、押されたり、また、石をなげつけられた生徒もいます。チョゴリ(朝鮮女性服の上着)がカッターで切られるという事件も起きています。在日コリアンの子どもたちに「日本から出ていけ!」「お前ら北に帰れ、拉致するぞ!」という暴言が投げつけられるなど、目にあまるものがあります。
 また、大阪府ではあからさまな民族差別文書が偽名で、在日コリアンに数百通送られるという事件も発生しました。もっとひどい例では、建物に銃撃や放火をしたという容疑で逮捕者も出ています。 
 戦前からの在日コリアンに対する日本人の差別意識が、日本人拉致事件をきっかけに急速に強化・拡散しているといえます。日本人拉致事件と在日コリアンは何らの関係もありません。
 東京弁護士会は在日コリアンの子供たちを勇気づけたいとの思いで、嫌がらせ防止を呼びかけるポスターを刷り、都内の私鉄車内や駅構内に掲示しています。呼びかけの中には、「未来ある子どもたちの心に傷を残すような行為を、絶対に許しません。国際水準に合格した人権先進国を作り上げましょう」という一節があります。
 このような相手の立場を思いやる視点こそが、真の共生社会実現のために求められているのです。