公正採用選考をめざして

「就職」は、すべての人々にとって、単に生活の安定を求めるというだけではなく、社会的存在としての自己を実現するための、極めて重要な入口です。
  わが国の憲法は「職業選択の自由」を保障していますが、そのためには就職の機会均等、即ちすべての人が適性と能力に応じて、自分が希望する職業に就く機会が与えられることが大事です。
  このことを実現するために企業においては、同和問題や基本的人権についての理解を深め、差別のない公正な採用選考に向けて努力することが重要です。
 特に、採用選考に際しては、応募者の家族状況など本人に責任のない事項を含め、就職差別につながるとされる14項目について、その項目がなぜいけないかを明確にしたうえでの取り組みが、今日の社会的要請となっています。
就職差別につながるとされる14項目
項目 なぜいけないか
(1)戸籍謄(抄)本提出 ○ 本籍、特にくわしい家族関係を知ることは、本人の能力、適正及び意欲に全く無関係であって差別につながる。昭和51年6月1日戸籍法の一部改正により、明治31年の戸籍法改正以来の「公開の原則」は人権尊重を重視する立場から大幅に修正された。
(2)社用紙(企業独自のもの)の使用
(3)身元(家庭)調査
(4)家族の職業、家族の家柄、家族の健康
(5)家族の地位、学歴、収入
(6)家族の資産
(7)住居状況(部屋数、間取りなど)
○ 労働者は労働の対価として賃金を受けるものであって、労働力を提供しても決して人格(人権の主体)を売り渡すものではない。したがって応募者・受験者の職務能力それ自身が問題であって、家庭環境や家族の職業、財産の有無などは、職業選考に際しては不要なものである。
(8)宗 教 ○ 信教の自由は憲法で保障されている。特定の宗派を敬遠することは憲法第20条「信教の自由」に違反する。
(9)支持政党 ○ 憲法第19条「思想及び良心の自由」第21条「集会、結社及び言論出版、その他一切の表現の自由」「通信の秘密」に違反する。
(10)生活信条 ○ 憲法第14条「法の下の平等」に違反する。
(11)尊敬する人物 ○ 尊敬する人物を通して思想や生活信条等を調査することになる。
(12)思 想 ○ 憲法第19条「思想及び良心の自由」に違反する。以上(8)〜(12)までは憲法に定められた市民的権利を侵害し、無用の不安を与え偏見を強いるものといえる。
(13)本籍、生まれ育った場所 ○ 特定の地域(同和地区など)の出身者を排除しようとする意図がうかがわれ「部落地名総鑑」などの利用にみられる社会の差別性とも深くかかわる。
(14)生活環境に関する作文
  (生い立ち、私の家族、父・母を語るなど)
○ 作文を通じて(1)〜(13)の項目を調査することになる。基本的人権を侵害する結果を招く。
徳島県商工労働部・ハローワーク 1999.5 「採用と人権」より
健康診断
守るべきことから
(1)
 
雇入時健康診断は、労働者を雇い入れた際における適正配置、入職後の健康管理に資するためのものです。
(2) 採用選考を目的とした、画一的な健康診断を実施してはいけません。
考え方
 採用選考を目的として、健康診断の検査項目について必要性を検討することなく、画一的に健康診断を実施することは、応募者の適正と能力を判断する上で関係のない情報を得ることになり、結果として就職差別につながるおそれがあります。
 新規学校卒業予定者の採用選考時に、画一的に「血液検査」や「尿検査」等の健康診断を実施する事業所が見受けられますが、応募者の適正と能力を判断するうえで必要不可欠であるか慎重に検討するとともに、実施する場合は、誰もが納得出来る理由を示すことが必要です。
 労働安全衛生法および労働安全衛生規制では、常時使用する労働者を雇い入れるときと、雇い入れ後一年以内ごとに一回定期的に、医師による健康診断の実施と本人への結果通知を義務付けています。
 しかし、雇入時健康診断は、常用労働者を雇い入れた際の適正配置、入職後の健康管理に役立てるために実施するものであって、採用選考時に実施することを義務付けたものではありません。
 ましてや、応募者の採否を決定するために実施するものではありませんので、ご注意ください
チェックポイント
(1) 採用選考を目的とした、画一的な健康診断を実施していませんか。
(2) 健康診断は、求人職種の職務遂行に関係のある検査項目になっていますか。
(3) 健康診断を実施する場合には、応募者に対して事前にその目的と検査項目について説明し、本人の了解を得てから行っていますか。
色覚検査の廃止
 平成13年10月安全衛生規則が改正され、雇入時健康診断項目から「色覚検査」が廃止されました。
 この改正の趣旨は、(1)色覚検査において異常と判別される人でも、大半は支障なく業務を行うことが可能であることが明らかになってきていること、(2)色覚検査において異常と判別される人を、業務に特別の支障がないにもかかわらず採用を制限する事例が見られること、です。
 「色覚異常は不可」と最初から決めてしまうのではなく、職務内容との関連でその必要性を慎重に検討し、就職差別につながらないよう配慮が必要です。
 また、必要性を検討したうえで色覚検査を実施する場合には、労働者に対して職務内容との関連性について十分な説明を行い、労働者の同意に基づいて適切に実施される必要があります。