エッセイ

昼食だけは作らないわよ

 過日、定年退職した友人が、妻に「昼食だけは作らないわよ」と通告された話しを聞いた。
私は、母親が障がい者であったため、小学校低学年の頃から、自分の身の回りのことはひと通り出来るようにと、母親から教育を受けた。特に料理作りに関しては厳しく、包丁で数えきれないほど指を切り、いやいやながら作ったことを覚えている。そのおかげで、現在ではある程度の料理を作ることができ、亡き母親に感謝している。
 友人が、もし料理を作ることができなければ、どうするのだろうか、「妻から手ほどきを受けるのか」「料理学校へ通うのか」それとも「コンビニエンスストアーの弁当」などと考えてみたが・・。
 「昼食だけは作らないわよ」との友人の妻のことばは、第一線を退いたとはいえ、昔と違い老人の仲間に入るには早すぎるとの思いと、お互いの今後の人生を有意義なものにするためのやさしさ、思いやりのシグナルではないだろうか。


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