エッセイ

我が家にも健康増進法 佐久間 進 
 今年もまた、鳩がベランダに卵を産むべく早朝から巣づくりの小枝を運び込もうと寄ってくる。その度に「何とかしてよ」の妻の声に押されてしぶしぶ追い払いにいくのが私。昨年は私の管理怠慢から一羽ふ化し、元気に巣立ってしまった。因みに、鳩は一度巣作りに成功すると二度三度と同じ場所に巣を作るという。今年我が家のベランダを狙っているのも同じ鳩かな?
 5月連休明けから妻が気管支を患い2週間ほど体調不良。已む無く私の喫煙場所はベランダに移転となり、嫌がっていた蛍族の仲間入り。折りしも健康増進法の施行と重なり、「私鉄のホームから灰皿撤去」のニュース。妻は、嫌煙権ここぞとばかり、「当然よ!」と一言で切り捨てた。その後、回復しても妻の「当然よ!」は生き続け、現在に至っている。かくて私の仕事は二つ増え、花の水遣り、鳩の番そして束の間の喫煙タイム。勤勉なベランダ喫煙の成果か、ひと月たった現在、鳩はあまり寄り付かなくなったようだ。
 そして、健康増進法の施行により私は新たな居場所を見つけ、鳩は産卵場所を失った。「我が家で法が守れずなんの人権担当者」と我が身に言い聞かせつつ、「それにしても、冬は寒いだろうなあ」と独りつぶやく「我が家の健康増進法」である。


戻る