エッセイ

森田 健一

挿絵  最近リュック式のバックや、大きなバックを肩から

掛けて闊歩している姿が目立ちます。物は沢山入り、

手は自由に使えて便利で良いでしょうが、混雑した街

中や乗物の中では非常に傍迷惑なものです。

 本人は気づいていないでしょうが、体の向きを変えたり、ラッシュの中で、

背中から我が物顔で入り込んでくる。人に押しつけようが、ぶつかろうが平気

な顔ですましている。 いかに個人主義の時代とは言え目に余るものがあります。

もう少し周囲の人を思いやる気持ちがないものでしょうか。

 大分昔の話になりますが、「小さな親切運動」と言うのがありました。老人

や身体の不自由な人に席を譲る、道にゴミが落ちていたら拾って捨てる・・・

等。これは自分だけが良ければ良い、のではなく、周囲の人や物にも気を配り、

お互いに大事にしあうことです。不況が長引き、新聞を開いても明るいニュ

ースは見られず、社会全体が殺伐としてきている昨今です。 こういう時こそ、

自分だけでなく、相手のことを思いやる気持ち、行動が必要なのではないでし

ょうか。


佐久間 進

挿絵  この春妻と行った温泉でのこと、風呂場には私と

65才位の男性と二人。洗い場にいた私の前の鏡を

通して、背後に居たその男性が湯船にもぐって遊

んでいるようにみえたのです。 また見るとまだ

もぐっている。「?」と思い、見に行くと湯当たりで意識をなくし溺れて

いたのです。慌てて引き上げ裸のまま人を呼ぶ。折よく元看護婦さんが居

た為一命はとりとめました。

 後日の礼状では、肺に水が入ったものの一ヶ月後に退院したということです。

「気が付いて助かったから良かったけど、もし気付かなかったら一緒にいて気付か

ないなんて」言われたね。「ここは高齢者が楽しみにして来る温泉だから、番台さ

んをつけるとか、監視用カメラを備えるとか」「高齢化社会って、1人で居るとか1

人で行動する場面がもっともっと増える事じゃないの」「その割りに配慮となると、

結構危なっかしいとこあるよ、今日のことだってひょっとしたらと思うとゾットす

るね」とその晩。そういう世代に私も妻も入っていく。


『ワールドカップ』に想う 小田切 順一

挿絵  例年の今頃は、鬱陶しい日々が続き、気分も滅入りが

ちなのだが、何故か今年は浮き々した気分で過ごしてい

る。というのも、今や世界の祭典と言うべきワールドカッ

プの真只中であり、サッカー好きの私にとって、世界のトップ

レベルのゲームを見る事が出来るだけで胸はずむ毎日なのである。

 「世界のスポーツ」といわれる世界のサッカー人口は8億人といわれ、フランス

大会の観客動員数は370万人に達するという。日本ではまだまだマイナーのサッ

カーだが、日本代表チームが、 Jリーグの発展をベースにサッ カー先輩国の韓国と

並び、アジアの代表として今大会に出場を果たした意義は大きい。

 来る2002年の第17回大会はアジア初、しかも日本と韓国の二国共催という

W杯史上初めての試みの大会であり、今回の経験を活かして是非成功させてほしい

と思う。世界が注目するイベントを日韓両国の協力で成し遂げることで、アジアの

隣人としての、国境・国籍を超える新たな交流、意識の変革がこれからの4年間で

急速に進むことを願い、又日本代表チームの晴舞台での健闘を祈って、今夜も眠い

眼をこすりつつ、ビデオをセットしよう。(6月10日)


「韓国へ旅して」 斎藤 正人

挿絵  韓国へ旅してきました。ソウルから二時間あまり、天安

(チョナン)にある独立記念館へ行きました。日本人は

あまり行かないところと聞きました。十二年前、国民の

総意で完成したという、壮大な建築物です。今回の旅行の

ガイドさんも、建築の際、浄財を寄付したそうです。

 韓国の古代から現代に至る歴史を展示した一から七号館のすべてを見学する時間が

なくて、日本が朝鮮半島の植民地化を図った頃の展示がある三号館から見たのです

が、日本の官憲が、韓国人政治犯を拷問する姿を再現したロウ人形は正視できない

ものがありました。説明文はハングルですが、写真・絵・英文説明などが理解を

助けてくれます。

  また、ソウル市内の景福宮(キョンボックン)で日本の悪行の一つといわれて

いる「閔妃暗殺の碑」の前に立ち、ここがその地かと、名伏し難い気持になりまし

た。

 私たちは、これらの歴史の事実をあまりにも知らなすぎます。隣国である韓国と

の史実を、もっともっと学ぶべきだと再認識した旅でした。

 


「人と環境に優しく」 大島 俊男

挿絵  駅の出入口などでよく見かけられる街頭配布。

ティッシュペーパーやボールペンなど、配布される

ものはさまざまだ。

 もう10年以上も前になるが、私自身にも街頭配布をした

経験もあり、受け取ってもらう難しさを決してわかっていないわけではないので、

目の前に出されるものは極力いただくことにしている。ただ、唯一例外としては、

たばこ会社の新製品など、たばこを嗜まない私には必要ないため、手をだす

ことはなかった。

 ところが先日、思わぬことから、たばこ会社の街頭配布品を自ら頂戴すること

になった。いただいたもの、それは新製品のたばこではなく、携帯用の吸い殻入

れ。

 愛煙家の皆さんには申し訳ないが、私は、たばこの煙が大嫌いである。あたか

もやっと吸えるとばかり、地下鉄の出口などを出たとたん、美味そうに煙を吐い

ている方を何人も見かけるが、その後ろで煙を吸う羽目になる私には、たいへん

な迷惑であり、ましてや何のためらいもなく、その吸い殻を道に捨てていく

神経には、人間性を疑いたくなる光景でもある。

 愛煙家の同僚に『これ使ってみたら』と、つい渡したくなって頂戴したが、

同僚は『ちゃんと持っているよ』との返事。そんなことで、まだ、その街頭

配布品は私のポケットの中で眠っている。

 いささかおせっかいな私は、愛煙家のあなたの後ろで、件の同僚に声をかけた

ごとく『これ使ってみたら』と声をかけるかも知れません。そんな時は

『迷惑でした?ちゃんと持っているよ』と笑顔の返事を聞かせてください。


「未来に禍根を残さぬように」 高見 馨

挿絵  週刊現代1月号の立花隆氏「人類を蝕む環境ホルモンの恐怖」

を読まれましたか?このテーマはテレビのドキュメンタリー

でも時々取り上げられ、欠かさず見ていますが、このレポート

はかなり衝撃的です。

 日本が世界一のダイオキシン汚染大国であること、催奇性や発ガン性だけでなく、

人間の生殖機能や免疫機能を破壊すること(最近の調査では若い男性を中心に精子の

数が減少しているとの報告もある)。花粉症や、アトピー性皮膚炎や家庭内暴力など

にも関係あるらしい等が説明されています。

 とりわけショッキングなのは70年代以降に生まれた人達は、胎児の時から汚染さ

れているというくだりです。

 立花氏は「虫歯があるとわかっていても痛み出さないと歯医者に行かないように、

人間は未来に予測され得る危険に対してなかなか本気になれない。いつも後手後手に

回ってしまう。」といいます。

未来に禍根を残さないように、私たちの身の回りで取り組めることは何か、家族で話

し合って行動にうつそうではないですか。

 


「兵庫駅での出来事」 中末 妙子

挿絵  友人と待ち合せのため、予定の電車に乗り込もうと、

駅のホームに駆け上がる。階段1/3くらいの所で、

80歳代のお婆さんを追い越した。

 お婆さんは、小脇に風呂敷き包みを抱え、手すりと

黄色い杖を頼りにハアハア言いながら昇っていた。

 電車がホームに到着しても、お婆さんのことが気になって電車には乗れませんでし

た。

 戻ってみると、お婆さんは階段半分を昇りきった所で止まっていました。

 私は階段を駆け降りて行き「一緒に昇りましょうか?」と声をかけた。

 するとお婆さんは「ワシ、山崎まで行きますねん。どうしても用があって」と言う

ではありませんか。私:「山崎って…」 お婆さん:「へぇ、姫路からバスに乗るん

や」 私:「こっちは大阪方面だから、向う側のホームですよ」と言った瞬間、お婆さ

んの杖がカラカラと階段の下まで滑り落ちてしまった。

 下まで杖を拾いに走り、お婆さんの荷物を引き受け、一緒に階段を降りはじめまし

た。

 身体を支えていても「なんて軽いんだろう?」と感じるほどの老体でした。

お婆さんの足元を気にしながらも、昇る人の邪魔にならないように2人で小さく

なって、ゆっくりと階段を降りていました。

 すると50半ばの女性に「アンタ、こっちは昇り!降りるのは反対側やろ!」と大声

で注意されました。

 悔しかったけれども、お婆さんに悪いと思い「すみません」と頭を下げて謝りまし

た。

 ブツブツと文句を言う女性が去ったあと、さっきから繰り返し「山崎に行く」とし

か言わなかったお婆さんが「スマンね、ワシが間違うてしもうたから…」と済まなそ

うに言うのです。

 「大丈夫!気にしないで降りよ」と下まで戻り、隣りのホームまで一緒に昇りまし

た。

 姫路駅に停車する快速電車に乗ってもらいましたが、とても心配でした。

 結局、約束の時間に30分以上も遅刻してしまい、友人にお茶をご馳走するハメにな

りましたが、その後もお婆さんのことが気になっていました。

 通りがかった“生田神社”でお賽銭を入れて、お婆さんの無事をお願いしました。

 私に出来ることはコレくらいしかないなんて、人間一人の力って、本当に非力です

ネ…。

 これからの高齢化社会に対応すべく、施設の完備や駅員の配慮、人の協力の大切さ

をいろんな方に知って、感じて欲しいと思った一日でした。

(この出来事に直面して感じたことは、高齢化社会は他人の問題ではなく、みんなの、

そして自分の問題として考えてほしいということに尽きると思います。老いは、

どんな人にも必ずやって来るものなのです。)


「下りのエスカレーター」 大久保  忠重
><IMG SRC=

挿絵  最近は従来階段であった所が、あちこちで全面エスカレー

ターに変わったり、又は一部片側にエスカレーターができた

りで大変便利になっている。

 中には5、6段しか無い所にも付いていたり、しかも下り

のエスカレーターまで付いていたりするとちょっと贅沢すぎて、やりすぎでは?

と思ってしまうこともあった。(もちろん車椅子用のスロープであれば、そんな

ふうには思わないが)

 ところが、そんな私が膝を痛めてしまった。平坦な道路ではなんとか歩ける

が、階段になると痛みが走りとても歩くことができない。しかも下りになった

ら上りの倍の痛さなので、ここでようやく下りのエスカレーターのありがたさ

がしみじみわかった。

 こうなって(膝を痛めて)階段を歩く時に周りを見ると、足の悪い人がなん

と多いことか。

 私の足の痛みは治療すれば治る一過性のものだがもっと悪い人はたくさんい

る。今の私から見ると、逆にエスカレーターはこんなに少なかったのかとつく

づく思うようになった。

 普段「差別される人の身になって… 」などと簡単に言っていたが、そんな簡

単に言えることではなく、まして「差別された人の本当の心の痛みを知る」な

ど<と言うことは、とてもできるものではないということがいまさらながら再認

識するのであった。


「今年のキーワードは”環境”」大木正文><IMG SRC=

挿絵  上戸の毒知らず、下戸の薬知らず(大酒飲みは、飲み過ぎ

ると酒が毒になるということを知らず、酒を飲まない人は、

薬になることを知らないの意)。

 昔から酒は百薬の長といわれ、晩酌も2合以内なら、HDL

(善玉コレステロール)を増やしてくれる効果があるとのこと。しからばと、

一杯傾けながら今年のキーワードは何だろうかと考えてみた。それは「環境」

ではないかと思う。昨年は京都会議をはじめとして、環境を考える取り組みが

目立った。

 エコエネルギー・エコマテリアル・エコエンジンと、世はまさにエコロジー

全盛の観ありだ。車は蒸気から始まって、ガソリンのレシプロエンジンで車社

会の幕が開け、今や直接噴射エンジンやハイブリッドカーが話題をさらってい

る。これはほんの一例で世界に名立たる企業は、こぞって環境を先取りした対

策を進めている。一度汚染環境を作り出すと、それを元に戻すには多大なコス

トがかかるからだ。我々も、環境問題を、個人としても企業人としても、真剣

に考えねばならない時期に来ているように思う。


「人権講座に参加して」河島 正雄><IMG SRC=

挿絵  10月13日から11月27日まで延べ11回にわたって開かれた人権講座

(部落解放研究所主催)を受講し、新たな交流と知識を得ることが

できた。

内容は、部落問題の歴史や実態を初め、国際的視野に立っての様々な人権問題や、2

度のフィールドワーク等バラエティに富んだものであった。なかでも「職場研修のこ

れからのあり方」では、その手法については非常に参考になり、又フィールドワーク

での五郎兵衛新田についての講義でも、そこでの被差別部落の成り立ち方の一つとし

て、その土地の住民に要請されて出来たというような話は非常に興味深かった。

 特に学習院大学から返還された5万点にも及ぶという古文書の多さと、桐箱に納め

ての保管管理や、当て字で書かれたような古文書の翻訳の苦労には気の遠くなる思い

がした。展示されている古文書を見て、自分が読み取れる部分は残念ながら一カ所も

なく、翻訳をされた、斉藤先生のご努力とご苦労にただただ頭が下がる一方だった。

 当時は北に浅間や菅平の山、南に八ヶ岳、下には千曲川を望む大自然のなかでの生

活も、今は新幹線や高速道路が延び当時との比較は出来そうにもないが、周囲の自然

の今昔は変わりようなく、浅間は今でも噴煙を出している。

 五郎兵衛新田も又、今でも水が流れ健在なり。


戻る